「子どもの頃から町の風景や商店街が好きでした。でも場所によっては『ちょっと衰退してるなぁ』『この場所、もっと人気が出ても良いのになぁ』と感じることが多くて。あと、若い子が集まる場所や都会に人が流れて行くのも問題だと思ったんですね。だから地域のことを、もっとちゃんと学びたいと思ったんですよね」。
地元・堺市の様子を思い浮かべながらそう話す楠美さん。地域連携プロジェクトに力を入れていたことやフィールドワークも多かったことが、この大学を選んだ理由という彼女は、3年生のときに泉大津市の長期インターンシップに参加します。
「キャリアセンターから泉大津市役所でインターンを募集するというメールが来たので、先生に相談すると『いい経験になるから絶対行った方が良いよ!』と後押ししてもらい、エントリーシートの添削もサポートしてもらいました。無事参加できることになり、そこから9ヶ月間インターンに行ってましたね」。
市役所職員や市民の人たちとのコミュニケーションは勉強になることばかり。その中でも特に印象に残っているのはボランティアでの「実感」だったと言います。
「そもそも参加してくれる人って、ボランティア精神がある人なんです。『じゃあ、積極的じゃない人にはどんな情報を知らせるべきなのか?』『意識を持ってる人たちだけで成り立ってるってどうなんだろ?』って考えたりして。それはたぶん、現場を体験したから分かったことだと思います」。
大学が地域連携の一環で行っているCOCOROEプロジェクトの一つ、「こよみ手帳」の制作にも携わりました。町の中の取り上げたいスポットを取材して作るガイドMAPの内容は、ほぼすべてが学生たちに任されるイチからのスタートだったようです。
「消防署や保護猫団体を取材させてもらったんですが、まず自分たちでスポットを決めて、SNSからDMでアポを取って会いに行きました。当たり前のことなんですが、質問事項を事前にちゃんと考えておいたり、事前準備が大切なことも身をもって体験できました」。
「メールの書き方やビジネスマナーも全然分かってなかったし、デザインソフトの使い方も勉強しました」という楠美さんですが、大きな不安を抱えながらの制作だったそうです。
「正直、『誰が手に取ってくれるんだろう』って半信半疑でした。言ってしまえば素人が作ったものだし別にいらないんじゃないかって。でも、『これも載せてください』って向こうから言ってもらったり『頑張ってるなぁ』『新しい手帳、また待ってるよ』って声も聞いたりして。その時はやっぱり嬉しかったし、気軽に声を掛けてくれる商店街らしい距離感の近さって素敵だなぁと思いましたね」。
地元の人しか知らないことや長く住んでいるからこそ気づく部分など、「ならでは」な情報をなるべく聞くようにしていたという彼女は、取材先の人と話すほど、その町のことが好きになっていったそうです。
地域を通じてたくさんの人と話し、関わってきた楠美さん。その魅力は何なのでしょうか。
「インターンシップでも市役所職員さんや市民の人など色んな世代の人たちと話しましたが、毎回何か吸収することがあるんです。本やネットで勉強できることもあるけど、やっぱりリアルに対話するってことは学びが深い気がしてー」。
大学生活では、先生が声を掛けてくれることに積極的に関わることが自身の成長にも繋がったそうです。
「元々はサボれるならサボろうってタイプでした(笑)。でも、『ワークショップやるから参加してみたら?』『学位授与式の司会してみない?』とか誘ってもらったことに向き合って、いざやってみると結構楽しかったんです。最初はイヤって思ったことも飛び込んでみるとすごく良い経験になることに気づけました」。
塾のアルバイトをしていたときも「先生と生徒」「年上と年下」という接し方ではなく、フラットに「人と人」として接することを心がけていたという彼女は、卒業後に幼児教育の現場で働くことが決まっています。「相手が子どもだとしても、お互いが学べたり、お互いが尊敬できるような関係を築いていきたいですね」という言葉通り、彼女なら一人ひとりと向き合うことの魅力や大切さをきっと子どもたちにも伝えられると感じました。