歴史には人を動かす力がある|社会学部 社会学科 田中誠先生インタビュー

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地元の環境をきっかけに歴史に興味を持つようになったという社会学部 社会学科 講師の田中 誠先生。地元とゆかりのある足利氏・室町幕府に加え、四天王寺大学周辺地域に文化財や遺跡がある南朝の研究をしたいと語ります。今回は歴史の魅力に触れるきっかけや、週刊少年ジャンプ(集英社)で連載中の「逃げ上手の若君」の解説動画で話題になった背景を伺いました。

まず「歴史とはどういうものか?」を知ってもらいたい

今は日本中世(院政~戦国)を中心に、他の時代の日本史も教えています。史学科系の学部学科でもよく言われるのは、「大学で習う歴史は暗記ではない」というのがあります。どういうことかというと、史料の読解を通じて歴史が「像」であることを知るというのがあります。ただ、私の所属は史学系ではなく社会学科なので、「歴史学とはどういうものか?」という入門的な内容を扱う際、戦前・戦後の教科書を比べて、どのような学説が背後にあるのか、どんなふうに「歴史」が作られているのかといったことなど、詳しく知らない学生に対しても歴史学について広く知ってもらえるような授業をしています。特に社会学科での授業では、偽史や偽文書、地元の偉人と歴史教育など、具体的で分かりやすいテーマも扱っており、今年はアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所を参考に歴史修正主義と歴史学の比較も行っています。時にはとっつきやすい歴史エンターテインメントを題材に授業をすることもありますね。

歴史エンターテインメントを通じて興味を持ってもらう

ジャンプチャンネルへの出演したことも授業に役立っていますね。

▲田中先生が解説者として登場した『ジャンプチャンネル』はこちらから

『逃げ上手の若君』は北条時行が主人公なのですが、これまでは「中先代の乱」を起こした人物くらいとしか捉えられていなかったと思います。歴史学的に見ても史料がそんなに多くないですし、どんな感じで漫画にするんだろうと思ってましたが、第一話のつかみが抜群でしたし、研究成果に基づいたリアリティの作り方がとても巧みです。

ジャンプチャンネルへの出演については思った以上に反響が大きく、出演後に学生や教職員に話しかけられたりしてビックリしました笑。学生からも「すごい」という感想をもらったりしましたね。論文を書いたり授業で話すよりも、こういった露出の方が反響が大きいのはやや複雑な気持ちではありますが笑。でも歴史エンターテインメントを足がかりにまず興味を持ち、そこから歴史学全体を深く知ってくれたら嬉しいですね。

自分に近いルーツから歴史を掘り下げる

自分が歴史に興味を持ったきっかけは、地元が栃木県であったことが大きいです。高校時代に室町幕府を立てた足利氏のことを教科書で知り、足利市との関係を考えるようになりました。当時の歴史の先生が研究や発掘をしているタイプの人で、話すうちに仲良くなったことも影響していると思います。

授業では、私の専門でもある南北朝時代に活躍した武将・楠木正成を取り上げることもあります。楠木正成は後醍醐天皇に仕えて河内・和泉の守護に抜擢されるなど有力な武士でした。四天王寺大学がある羽曳野市は、当時南朝の支配下にあり関連する史料や遺跡なども多いので、地元であったり自分に近しい環境から歴史に興味を持ってもらうのは接点として良いかなと思いますね。

今後は、当面の目標として、室町幕府の研究に関する単著を出すことです。研究者としては外せない目標ですし、空いている時間に少しずつ書き進めてはいるので近いうちには出したいですね。その後に南朝に関する研究も進めていければと思っています。

過去と現代と比較することで見えてくるもの

歴史の魅力の一部として、過去には過去の人々の価値観があり、現代と照らし合わせるとむしろ現代のほうが非合理に見えて問題的が浮かび上がってくる場合もあります。先ほどの楠木正成で言うと、戦前まではものすごく人気があり、逆に足利氏は朝廷の逆賊として敵視されてきました。ですが、戦後研究が進んでいくとそうした評価も大きく変わってきています。歴史学で明らかになる歴史像は、残された史料を読み解き、なるべく現代の価値観を排除して評価するのが望ましいのですが、現代人である以上なかなかそうはいかない部分もあり、難しさや怖さを感じることもあります。ですが、遥か昔に起こったことから何が見えるか?何を言えるか?を紐解いて歴史像を提示するのは、歴史学のとても面白い部分だと思いますよ。

WRITER
田中 誠 / たなか まこと

四天王寺大学 社会学部 社会学科 講師
担当講義:入門歴史学/歴史社会学、史料講読、日本史研究、フィールドワーク入門
研究分野:日本中世史

高校の時に歴史に興味を持ったのですが、「室町時代ってマイナーでよくわからんな」と思って大学で室町幕府の勉強をはじめました。サラリーマンもやりましたが、室町時代がおもしろくてやめてしまい、今の仕事につながりました。昔の価値観を古文書や寺社など実物の文化財などから知ることもおもしろくて、皆さんとも歴史のおもしろさを分かち合いたいです。

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四天王寺大学:社会学部 社会学科
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