Shitennoji University

  • ホーム
  • お知らせ
  • 11月5日(日)奈良県認知症ケア専門士会設立10周年記念講演会・大阪府認知症ケア専門士会合同研修会が開催されました。

お知らせ 11月5日(日)奈良県認知症ケア専門士会設立10周年記念講演会・大阪府認知症ケア専門士会合同研修会が開催されました。

研究・社会連携

2023年11月5日(日)、四天王寺大学あべのハルカスサテライトキャンパスで奈良県認知症ケア専門士会・大阪府認知症ケア専門士会合同の研修会が開催されました。本学からは、人文社会学部の笠原幸子先生にも認知症の人の意思決定支援に関してご講演いただきました。

 認知症ケア専門士は、人口の高齢化とともに増えゆく認知症の人へのケアに対する技術の向上や保健・福祉に貢献することを目的として平成15年に日本認知症ケア学会総会で決定された資格です。認知症ケア専門士は、3年以上の経験年数とともに試験に合格することが必要なのですが、さらに、認定後も生涯学習に対する義務が課されています。
 奈良県では2014年に四天王寺大学看護学部長兼看護実践開発研究センター長の山崎尚美教授(前畿央大学教授)が関西で初めての認知症ケア専門士会を設立され、その後毎年研修会を開催しています。今年は奈良県認知症ケア専門士会設立10周年にあたり、また全国認知症ケア専門士会設立とも重なるため、奈良県認知症ケア専門士会・大阪府認知症ケア専門士会が合同で研修会を開催しました。

 
 研修会は対面とオンラインでハイブリット開催とし、対面で30人、オンラインで27人の合計57人の参加がありました。
 まず冒頭に、奈良県認知症ケア専門士会の山崎尚美会長から研修会開催の挨拶があり、次に大阪府認知症ケア専門士会の升山弘子会長から奈良県認知症ケア専門士会設立10周年の祝辞が述べられました。

写真:奈良県および大阪府認知症ケア専門士会会長の挨拶

 講演会では、1つ目に高知県立大学社会福祉学部准教授の矢吹知之先生に「認知症カフェ今までの10年間の成果とこれからの課題」というテーマでご講演をいただきました。矢吹先生は認知症介護研究の第1人者であり、認知症カフェに関する書籍も多数ご執筆されています。アルツハイマーカフェ創始者であるオランダのベレ・ミーセン氏ともご執筆されていて、認知症の人やその家族の心理状態や状況などを通して、認知症カフェのもつ意味やあり方についてわかりやすくお話してくださいました。認知症カフェには、認知症の方やそのご家族・地域の方・専門職の方が来られ、それぞれ求めるものが違うので教育プログラムやカフェタイム・ディスカッションタイムなど部門に分けて行う必要があることや、認知症カフェを居場所づくりの場とするだけではなく、地域全体を変えていく必要があることを学びました。

写真:矢吹先生による認知症カフェの講演

 また、「令和4年度老人保健健康増進等事業 認知症カフェの類型と効果に関する調査研究」の結果から、どのようにすれば認知症カフェの安定運営につながるか等もご講演頂きました。
来場者からは、認知症カフェで参加者から心許ない発言があった際にどう対処すればよいかという質問があり、矢吹先生は、『発言すること自体は悪いことではない。発言する人を排除するのではなく、発言があった際にフォローするモデレーターが必要』であることや、『発言する人が育っていくことが必要だ』という説明をしてくださいました。

写真:参加者からの質疑応答

 講演2つ目は、四天王寺大学人文社会学人間福祉学科教授の笠原幸子先生に「成年後見活動における意思決定支援ツールの開発」というテーマでご講演いただきました。認知症の人に対する意思決定支援には日常生活や社会生活など広い範囲の支援が必要になります。先生は、ソーシャルワークの視点から意思決定支援を検討する必要があり、その具体的内容については1.意思決定支援の前提条件 2.意思決定支援の展開過程 3.チーム支援があるとして、それぞれについて詳しく説明してくださいました。また、先生が作成された意思決定支援のチェックリストもご提示してくださいました。先生は、意思決定支援は認知症の人の意思を決定することがゴールではなく、支援するプロセスが大事で、一人ですべて引き受けず、支援者がチームを組んでトライ&エラーを繰り返すことに意義があると述べられていました。

写真:人文社会学部 笠原幸子先生による意思決定支援の講演

 ご講演の後、升山会長からは『意思決定支援については、認知症基本法ができてこれから一緒に行っていく機会が増えていく。我々が認知症の方の意思決定支援と向き合う際に支えとなるのが認知症ケア専門士の仲間達であり、認知症の人をよく見てよく話を聞いて、その人たちから学び、認知症と共に生きる新しい価値を見出し、広げていくことが大事だと思う』とコメントがありました。
 ご講演の後は会長対談で、升山会長と山崎会長からそれぞれの認知症ケア専門士会設立までのあゆみや活動内容、会員募集等について話がありました。

写真:両会長の対談

 会長対談の後は、ワールド・カフェを開催しました。ワールド・カフェとは、会議室で日々繰り返される機能的な会議よりも、カフェで行なうようなオープンで自由な会話を通してこそ活き活きとした意見の交換や、新たな発想の誕生が期待できる、という考え方に基づいた話し合いの手法です。テーブルでのアイデアが、「他花受粉」のように、どんどん他のテーブルへと拡がり、新たな発想が生み出されます。
 今回は5人ずつ、3つのグループに分かれ、「認知症ケア専門士のこれからの活動」について自由に意見が交わされました。10分ごとにメンバーが入れ替わり、最後には元のグループに帰ります。その時には新たな意見が出されていて、話し合いは盛り上がっていました。

写真:ワールド・カフェの様子

 
 今回、とても興味深いお話をわかりやすくご講演いただいた講師の先生方、ご参加くださいました方々に心から感謝申し上げます。
 今後も認知症ケア専門士会は、認知症ケアの質の向上を目指して研修会等を行って参ります。今後ともどうぞよろしくお願い致します。

一覧に戻る