Shitennoji University

令和4年度 科学研究費助成事業(科研費)令和4年度 採択課題 研究概要③

高校歴史系科目の学習成果を可視化する論述課題とルーブリックの開発

研究代表者氏名 中村 洋樹
(ナカムラ ヒロキ)
所属 人文社会学部
社会学科
職位 講師
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 22K02245

研究の目的

日本の高校歴史授業は、コンテンツベースの授業からコンピテンシーベースの授業へと大きく転換しつつある。このような転換に伴い、近年は授業方法や学習方法だけではなく、学習成果の評価についても研究が進められてきており、特に歴史的思考力を評価する方法として論述・記述の重要性が認識されてきている。しかし、こうした研究は大学の入試問題やワークシート等の記述の評価に関する議論に終始している。そのため、日々の歴史授業(単元レベルを含む)のなかで論述課題を設定し、何ができるようになったか、何ができていないのか、それをどう改善していけば良いかを可視化することに殆ど焦点が当てられていない。
高校歴史系科目においてコンピテンシーベースの改革を発展させるためには、全ての学習者を対象とした、学びの過程も含めた「学習成果の可視化」という観点から論述課題の設計や評価方法に関する研究を進めることが急務である。
本研究は、以上のような問題意識のもと、2022年度から実施される新設科目「歴史総合」を対象に、高校歴史系科目における学習成果、特に学習の伸びや軌跡を可視化する論述課題とルーブリックを開発するとともに、そのプロセスを踏まえ、多くの教師がこれらを開発できるような方法を提案することを目的とする。

期待される研究成果

期待される研究成果は、第1に、高校歴史系科目における評価に関する研究を、全ての学習者に保障すべき教育目標の実現を射程に入れた研究へと発展させることである。本研究は、①研究参加者に進学校だけでなく進路多様校の教師を含め、②必履修科目である「歴史総合」を対象としている。このようにアプローチすることで、一部の教師あるいは学校にしかできないような提案とは異なり、学校や生徒の特性を考慮した汎用性・実現性の高い論述課題とルーブリックを開発し得る。
第2に、生徒の学習成果のうち、特に学習の伸びや軌跡を可視化する長期的ルーブリックを開発することである。近年の高校歴史授業においては、論述課題を課し、生徒の作品をルーブリックで評価するケースが増えている。しかし、往々にして、特定の課題(1時間レベルの課題や単元レベルの課題)を採点するためのルーブリックであることが多いため、長期的な学習成果を把握する点に難点があり、生徒にとってわかりにくいものも多い。対して本研究では、実際の生徒の作品を踏まえて長期的な学習成果を可視化するルーブリックを開発する。このようなルーブリックは、教師が生徒の実態に即したコンピテンシーベースの授業改善を進めていくためのリソースになり得る。また、その開発プロセスを提示することで、多くの教師に勤務校の生徒の実態に即したルーブリックの開発を促すこともできる。

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学校で働く看護師のコンピテンシーモデルに基づく教育プログラムの構築

研究代表者氏名 岩佐 美香
(イワサ ミカ)
所属 看護学部
看護学科
職位 講師
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 22K11077

研究の目的

本研究の目的は、学校で働く看護師(以下学校看護師)のコンピテンシーモデルを作成し、コンピテンシーの向上につながる教育プログラムを構築することである。
医療技術の進歩等により、学校において医療ケアを提供する学校看護師を取り巻く状況は大きな変化を見せている。“医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律”が施行され、学校で医療的ケアの必要な児童生徒への対応体制を整備するため、学校看護師の雇用が拡大する。しかし、学校看護師への教育や研修は未整備である。 本研究では、①学校看護師が自信をもって看護活動を行うための指標となる学校看護師のコンピテンシーモデルを作成する。②コンピテンシーの向上につながる教育プログラムを構築する。③教育プログラムの実施可能性と有効性について検討し普及に向けた示唆を得る。

期待される研究成果

これまでの研究では、学校看護師の緊急時の対応、活動支援、研修の必要性や困難感についてはなされている。しかし、学校看護師のコンピテンシーに関する研修はなされていない。また、コンピテンシーに基づいた教育プログラムも構築されていない。学校看護師のコンピテンシーを明らかにし、コンピテンシーの向上につながる教育プログラムを構築・普及することで、看護ケアの質の向上をはかることができる。

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「多様性」をめぐる学力を形成する中学校教科横断型カリキュラムの開発

研究代表者氏名 永田 麻詠
(ナガタ マヨ)
所属 教育学部
教育学科
職位 准教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 22K02615

研究の目的

本研究の目的は、今日学校現場においても重視されている「多様性」の諸相を検討するとともに、子どもが当事者性をもって「多様性」について考えられる資質・能力を教科教育に位置づけ、教科横断型カリキュラムを開発することである。また、「多様性」をめぐる教科の学力を提案することで、従来の学力観を再構築することも企図している。

期待される研究成果

  • 「多様性」の諸相を明らかにしたうえで、中学校を対象に目標や方法を系統化した教科横断型カリキュラムを構築することができる。
  • 包括的性教育や批判的リテラシー、シティズンシップ教育、いのちの教育などに着目して、青年前期という発達段階を考慮した「多様性」をめぐる教科横断型カリキュラムの開発が期待される。
  • 中学校における「多様性」をめぐる学力の提案が、国語科、社会科、特別の教科道徳における従来の学力観を転換することが期待される。また、「多様性」をめぐる学力の提案を行うことにより、それぞれの教科の固有性をも浮き彫りにすることが期待される。
  • 開発した教科横断型カリキュラムの一部を試行し、フィードバックすることで、実践可能な中学校のカリキュラムを構築することができる。

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大腸がん検診における組織型検診をめざした受診行動サポートシステムの有効性の検証

研究代表者氏名 藤原 尚子
(フジワラ ナオコ)
所属 看護学部
看護学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 22K10888

研究の目的

社会環境の変化を踏まえた大腸がん検診の徹底的な精度管理をめざして、大腸がん検診における受診行動のサポートを補強していくことが重要である。そこで本研究は、大腸がん組織型検診(Organized Screening)をめざした受診行動サポートシステムを運用し、その評価と修正を行うことによって、受診行動サポートシステムの有効性を検証することを目的とする。

期待される研究成果

大腸がん検診における受診行動サポートシステムの有効性が検証されれば、大腸がん一次検査(便検査)と精密検査を含めた精度管理として、組織型検診の確立と受診率の向上および死亡率の減少が期待される。また、先進国の中で日本は大腸がん死亡率が年々増加しているため、これまでに開発した「大腸がんOrganized Screeningに向けた受診行動支援プログラム」を活用し、独自性の高いシステムとして、大腸がん検診における組織型検診(Organized Screening)をめざした受診行動サポートシステムの構築を展開しながら、看護の視点から大腸がん検診における組織型検診(Organized Screening)をめざした受診行動サポートシステムの有効性を検証することができる。

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子育て支援プロモートモデル実装へのVRを活用した小児救急場面ソリューションの開発

研究代表者氏名 藤澤 盛樹
(フジサワ セイキ)
所属 看護学部
看護学科
職位 講師
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 22K10969

研究の目的

本研究の目的は、子育て支援プロモートモデルの実装にむけて、Virtual Reality(VR)を活用した小児救急場面ソリューションを開発することである。小児救急医療機関利用割合の高い乳幼児の育児を担う親を対象に、乳児期・幼児期に生じやすい健康逸脱場面や小児救急医療が必要な子どもの状態、家庭で対処可能な場面を、Virtual Reality(VR)で作成し、Augmented Reality(AR)によって親の判断やケアを疑似体験できるソリューション開発を行い、その有用性を検証する。

期待される研究成果

本研究の成果は、Virtual Reality(VR)によって創り出された臨場感のある子どもの急な病気や怪我などのシチュエーションを、Augmented Reality(AR)により親が体験でき、子どものケアを感覚的に実践できる。そして、繰り返して体験が可能であるため、親の戸惑いや不安を低減させ、子どもの健康逸脱時の判断とケアに対する親の自信補強や育児能力向上に寄与する子育て支援ソリューションとなり得る。

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古典期ローマにおける相続と贈与

研究代表者氏名 後藤 弘州
(ゴトウ ヒロクニ)
所属 経営学部
経営学科
職位 講師
研究種目 若手研究 研究課題番号 20K13308

研究の目的

現代において相続と贈与の間に深い関係があることはよく知られており、そのことは古典期ローマにおいても変わらない。本研究は具体的な事例を検討することにより、古典期ローマにおける相続と贈与の関係について明らかにすることを目的とする。ここでいう贈与には死因贈与も含まれ、生前贈与と死因贈与の関係についても研究対象としている。

期待される研究成果

  • 古典期ローマの相続における死因贈与の働きについて明らかになる。
  • 古典期ローマにおける生前贈与と死因贈与の関係について明らかになる。
  • 古典期ローマにおける相続実務についての理解が深まる。

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高齢者施設におけるウイルス感染リスク低減のための実証研究

研究代表者氏名 吉本 和樹
(ヨシモト カズキ)
所属 看護学部
看護学科
職位 助教
研究種目 若手研究 研究課題番号 21K17444

研究の目的

高齢者施設で生活する高齢者の発熱の原因の大半は感冒や気管支炎であることが申請者の先行研究で分かっている。感冒の原因としてウイルスによる感染によるものが考えられるがウイルスなどの感染対策の徹底具合については各施設間で温度差がみられる。この施設間での感染対策の差異については、高齢者施設での感冒や気管支炎などのウイルス感染リスク低減のための効果的な方法について検証が不十分であることも関連しているのではないかと考える。そこで、高齢者施設で手指消毒や生活する部屋などの除菌・消毒徹底が感冒や気管支炎などのウイルス対策による発熱発症リスク低減に効果があるのかについて実証することが本研究の目的である。

期待される研究成果

申請者は2019年から高齢者施設で生活する高齢者の発熱に関する調査を行っている。その調査結果から、高齢者施設で生活する高齢者の発熱の原因の大半は感冒や気管支炎であること、そしてウイルスなどの感染対策方法については施設間で異なっていることが分かった。本研究により、多くの高齢者が同じ空間で生活する環境下でのウイルス感染リスク低減に効果的な方法や対策が明らかになれば、高齢者の発熱による医師及び医療機関の受診機会を減らすと同時に施設で生活する高齢者の健康維持やADL維持にも貢献できると考える。

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南北朝期室町幕府機構と官僚制の研究

研究代表者氏名 田中 誠
(タナカ マコト)
所属 人文社会学部
社会学科
職位 講師
研究種目 若手研究 研究課題番号 21K13106

研究の目的

本研究は、室町幕府将軍の直臣であり、政務運営の実務を担う評定衆・奉行人に着目して、その地位や機能の変化から幕府権力の展開過程を明らかにするものである。評定衆・奉行人は、引付方など幕府機関に所属し、裁判や文書作成にかかわるところから、研究史上官僚や吏僚と呼称されており、本稿でも彼らを官僚と総称する。
これまで官僚層は6代将軍義教期以降にその権限を増大させると言われてきたが、南北朝~室町期の検討が不十分なまま出された結論であった。とりわけ、官僚層の氏族構成や世襲化の動き、南北朝期に新設される役職や諸機関と官僚層の関係は未解明である。これらを検討し、幕府がいかなる社会問題に直面して制度を変えていったかを明らかにする。同時に、官僚を統制する手段としての昇進制と将軍・大名との関係から人事権の在り方に着目し、将軍と諸大名との幕政をめぐる諸矛盾をあぶりだす。近年では室町殿≠将軍の地位の絶対性を説く研究が多いが、官僚制の検討を通じてそうした見方を相対化することを目的とする。

期待される研究成果

そもそも室町幕府奉行人を「将軍直属の官僚」とみなすのは、マックス・ヴェーバーの提唱する前近代の家産官僚制論の影響である。にもかかわらず、彼らの中核的機能である文書起草やその過程における役割、昇進制度の成立や展開といった、「官僚」を官僚たらしめる制度については明らかにされていない。また家産官僚制のイメージが強く、「将軍直属」の官僚という面のみが強調されており、諸大名家にも仕える「兼参奉行人」にも注目されてこなかった。こうした将軍や管領、諸大名と官僚層の結合形態に着目し、南北朝内乱の影響を考慮にいれ、官僚層の展開過程を解明するところに本研究のオリジナリティがある。
その前提として、奉行人の職員リストを作る必要がある。これまで2095件分の在職考証を完成させた。かかる基礎的な実証研究に基づき、官僚制という一貫した視点から室町幕府の権力機構に迫る点が独創的であり、先行研究のある鎌倉期から室町期までの武家官僚制史を構築することができる。日本史上に存在する他の官僚制(律令官僚制や公家官僚、戦国大名家中論)との比較検討も可能となるといえる。

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複言語教育に基づいた分野横断的PASTEL学習のための教材開発
(Development of Teaching Materials for Interdisciplinary Plurilingual Learning)

研究代表者氏名 ピアース ダニエル ロイ 所属 教育学部
教育学科
職位 講師
研究種目 若手研究 研究課題番号 22K13185

研究の目的

【概要】外国語学習者の多様化しているニーズに応えるため、複言語教育に基づいた分野横断的なPASTEL(Plurilingualism, Arts, Science, Technology, and Literacies)が提案されている。PASTELは対象言語の習得だけでなく、複数の言語や文化そのものを学習内容として捉え、他分野の学習内容と結び付け、多様な相手や言語の使用場面に対応する力の育成を目指す教育的アプローチである。しかし、複言語教育の先行研究の多くは多言語環境で行われ、日本のような言語的均質性が高い文脈での有用性は十分に解明されていない。そこで本研究の目的は、大学・高等学校向けの教材開発や文脈化を行い、実践研究を通して日本の外国語教育におけるPASTEL教育の有用性を検証する。

【目的】
1)既存の複言語教育、STEAMやPASTELに関する文献を参照し、日本の大学外国語教育のためのPASTEL教材を作成し、実践研究を通してその有用性を検証する。
2)高等学校の現役教員とともに他教科接続と地域連携を視野に入れたPASTEL学習の意義・有用性を検討する協働アクション・リサーチを行い、教材を作成する。
3)上記の1)と2)で作成した教材及び研究協力者の知見を元に、学習目標を明示化したPASTEL学習のための「教育シナリオ集」を構築し、公開する。

期待される研究成果

1)海外で作成された既存の複言語教育やPASTEL教材等の日本の大学・高等学校への文脈化を行うとともに、現役教員との共同アクション・リサーチを通して、学習者の多様化しているニーズにあった教材を作成し、公開する。
2)地域連携活動の一環として、地域史と外国語活動を結び付けて、本学の「和の精神」に合った「多様な社会に生きる中でお互いの違いを理解し、受け容れ、調和していく」ための複言語教育のあり方を検討し、教育シナリオを作成し、公開する。

上記の2つに加えて、日本語・英語を含めた複言語教育に関する現役教員向けワークショップ等を開催する予定。

備考

研究期間中に作成した教材・教育シナリオをyaekotoba.com(日本の複言語教育のためのサイト:JSPS科研費19K23092の助成を受けたインターネット上の教材集)にて公開する。

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妊孕性温存治療を受けた女性乳がん患者の妊娠・出産へ向かう体験

研究代表者氏名 小西 玲奈
(コニシ レイナ)
所属 看護学部
看護学科
職位 助教
研究種目 研究活動スタート支援 研究課題番号 22K21098

研究の目的

女性にとっての妊孕性とは、妊娠のしやすさ、妊娠できる力であり、妊娠を可能にするための不可欠な生体の力である。そのため、妊孕性の喪失は、子どもを産み家族を形成する権利への脅かしとなるだけでなく、パートナーとの間にも人生設計の変更など深刻な問題を引き起こす可能性もある。
乳がん治療におけるがん薬物療法には、卵巣機能抑制に伴う妊孕性喪失の可能性があり、その回避手段として妊孕性温存治療が挙げられる。申請者らは、生殖可能年齢にある女性乳がん患者が、がん薬物療法前に妊孕性温存治療を受けるか否かに関する意思決定過程を説明する理論を生成した。しかし、意思決定後に妊孕性温存治療を経た女性乳がん患者の詳細な知見は、現時点でほとんど得られていない。本研究では、妊孕性温存治療後から胚移植を経た患者の体験を明らかにする。

期待される研究成果

本研究では、女性乳がん患者自身から捉えた妊孕性に関する体験を明らかにする。明らかになった患者の体験から、どのような看護支援を必要としているかを検討し、がん・生殖医療領域における看護支援整備のための新たな知見をもたらすことが期待される。さらに、子どもを望む女性乳がん患者に対して、がん治療と併せて、生まれてくる新しい命について検討できること、将来的な人生計画・家族計画という視点から展望の可能性を見出す一助として貢献できると考える。

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大腸がん検診における組織型検診をめざした受診行動サポートシステムの構築

研究代表者氏名 藤原 尚子
(フジワラ ナオコ)
所属 看護学部
看護学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 18K10297

研究の目的

先進国において、日本は大腸がん死亡率が年々増加しており検診受診率は男女共に低いことが明らかになっている。国外では、がん死亡率の減少を目的とした政策として、組織型検診(Organized Screening)が行われ、その効果が報告されている。しかし、日本は組織型検診体制が未整備の段階である。したがって、大腸がん検診の受診行動サポートにおいては、受診者および非受診者に対するICT(Information and Communication Technology)を用いたインタラクティブな受診勧奨である介入型啓発活動を行い、受診行動につながるようサポートシステムの構築をしていくことが重要である。本研究では、大腸がん検診における組織型検診(Organized Screening)をめざした受診行動サポートシステムの構築を目的とする。

期待される研究成果

本研究において、大腸がん検診の受診者および非受診者に対して行う介入型啓発活動として、ICTを用いてインタラクティブな受診勧奨(コール)・検診1年後の再勧奨(リコール)による受診行動と受診率向上の効果について明らかにすることで、受診者の特性を考慮した検診の受診行動へのサポートが実施できる。食の見直し、定期的な運動など健康への意識は高まっているが、まだまだ予防医療に対する意識が低いため、1)スモールメディアであるビデオや印刷物およびICT をツールとした受診勧奨の効果、2)アクセス向上などの費用以外の障害の除去の効果、3)電話や面談などの1対1の教育の効果を検討し評価することは、組織型検診(Organized Screening)の確立をめざし、受診者へのシームレスなサポートにつながると考える。これまで研究代表者らは、大腸がんOrganized Screeningに向けた受診行動支援プログラムの開発によるプログラムを活用し、得られた結果を基に大腸がん組織型検診に向けた受診行動支援プログラムの有効性の検証へと展開してきた。本研究では、これまでの研究成果をもとに大腸がん検診の受診行動をサポートできるプログラムを導入したシステムを実用化することにより、独自性の高いシステムの開発が可能となる。また、このシステムを活用し大腸がん検診の受診行動を完遂することは、受診者のみならず医療従事者の他、関係市町村にとっても将来的に受診率向上への大きなメリットになると考えられる。さらに、全国的に新しい対策となる大腸がん検診の受診行動における介入型システムのマネジメントが期待できるとともに、このシステムの構築により大腸がんの受診率の向上と死亡率の低下が期待される。

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小児救急医療機関における子育て支援プロモートモデルの開発

研究代表者氏名 藤澤 盛樹
(フジサワ セイキ)
所属 看護学部
看護学科
職位 講師
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 18K10411

研究の目的

小児救急医療機関において子育て支援を促進するための方略をモデル化し実践へ適用することを目的としている。

期待される研究成果

社会的な子育て支援のとりくみが小児救急医療機関に拡充することで、子育て支援の必要な親子や子育て支援を要望する親など、誰もが小児救急医療機関受診を契機に子育て支援へつながる機会を提供でき、セーフティネットとしての役割にも期待がもてる。本研究は、子育て支援に関する既存の社会資源と切り離した子育て支援モデルを開発するのではなく、既存資源の応用を探求しながら、親が利用しやすくニーズに応えられること、小児救急医療機関として効率的で実行可能であることの双方を重視した子育て支援プロモートモデルの開発を目指している。

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ADHDに関わる神経心理学的指標を包括的に取り入れたアセスメントバッテリーの開発

研究代表者氏名 鈴木 浩太
(スズキ コウタ)
所属 教育学部
教育学科
職位 講師
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 19K03304

研究の目的

注意欠如・多動性障害(Attention Deficit Hyperactivity Disorder:ADHD)児の病態は、「反応抑制」、「作業記憶」、「持続的注意」、「遅延嫌悪」、「時間感覚」、「情動調節」など、多様な神経心理学的指標を用いて理解されてきた。他方、多様な指標が整理されていないので、臨床で活用することは困難である。本研究では、ADHD児に関わる神経心理学的指標を包括的に取り入れたアセスメントバッテリーを開発する。

期待される研究成果

先行研究では、単一の機能に基づく神経心理学的指標からADHD児の判別を試みるものがほとんどであり、ADHDを判別することに限界があった。本研究では、多様な神経心理学的指標がADHDに関わると考え、異なる神経心理学的特徴をもつADHDのサブタイプを仮定して研究を推進し、アセスメントバッテリーを開発する。ADHD児に対する支援法や薬物療法が提案されてきたが、どの方法でも、効果のあるケースとないケースが報告される。本研究の成果を活用して、サブタイプ別の支援方法が提案されていく可能性があり、エビテンスに基づく支援・治療を個人特性に合わせて提供するシステムの構築に貢献することが期待できる。

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腎移植レシピエントの性の健康を支援するアプローチの検討

研究代表者氏名 吉川 有葵
(ヨシカワ ユキ)
所属 看護学部
看護学科
職位 准教授
研究種目 若手研究 研究課題番号 18K17590

研究の目的

腎移植で期待される効果の一つに性機能の改善がある。腎移植を受けた女性は月経の再開により妊孕率は回復するが、生児獲得率は一般女性より低い。一方、腎移植を受けた男性は、黄体ホルモン・卵胞刺激ホルモン・プロラクチンの改善、勃起機能、精子濃度と運動性が改善するが、自覚的性機能の改善は乏しい。男女ともに生殖機能や性生活における心理的負担は大きく、性機能を取り巻く心理的側面の改善には至っておらず、レシピエントは性の健康に問題を抱えている。本研究では腎移植レシピエントにおける性の健康、QOLの維持・向上につなげるため、腎移植レシピエントの性機能およびQOL、性機能を取り巻く要因との関連を明らかにし、腎移植レシピエントの性の健康を支援するアプローチモデルを開発する。

期待される研究成果

腎移植は透析療法と比較して妊孕率という身体的側面の改善は認められるが(岸川,1998)(永野,1998)、男女ともに生殖機能や性生活を取り巻く心理的側面の改善には至っておらず(Hamoud H,2009)(KDIGO GUIDELINES,2009)(岸川,1998)、レシピエントは性の健康に問題を抱えている可能性がある。移植医療の進歩により移植後に妊娠・出産するレシピエントは増加している。妊娠・出産に至るにはレシピエントの性機能の改善、健康的な性生活が必要不可欠だが、わが国の文化的背景から軽視される傾向にある。レシピエントは生涯、免疫抑制剤の内服を避けられず、不安や苦悩、葛藤、希望といった様々な心理状態にあり(Tong A,2015)、このような要因が性の健康に影響を及ぼしている可能性が考えられる。本研究で腎移植レシピエントの性機能およびQOL、性機能を取り巻く要因との関連を明らかにすることは、レシピエントが抱えている表面化していない問題の解決が期待でき、慢性疾患を抱えながら性の健康を維持し、安全な妊娠・出産につなげ得るものになると考える。

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中学校アクティブ・ラーニングにおける「対話的実践」の可能性と課題

研究代表者氏名 山田 綾
(ヤマダ アヤ)
所属 教育学部
教育学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 17K04589

研究の目的

本研究では、日本の中学校でアクティブ・ラーニングを導入する際に、主体的で深い学びが成立するために「対話的実践」が果たす役割と条件について明らかにすることを目的とする。そのために、以下に取り組む。

  • 1.フランスのフレネ中等教育の実験的プログラムを取り上げ、主体的で深い学びの具体的展開を「対話的実践」の視点から検討する。教授中心の教育から生徒主体の学習へと転換する際に、生徒の個別化学習と共有化における「対話的実践」の可能性と課題や教師の役割・教育課程・評価のあり方との関係について検討する。
  • 2.日本で戦後生活教育の理念に基づき全教科や総合学習で問題解決的学習過程に取り組む学校(愛知教育大学附属岡崎中学校など)と公立中学校の調査を行い「対話的実践」の可能性と課題を検討する。

期待される研究成果

本研究では、ダイナミックにカリキュラム開発とアクティブ・ラーニングに取り組む実験校の実践を「対話的実践」を核に分析し、アクティブ・ラーニングを具体的に実現していく視点を明らかにする。取り上げるのは、研究代表者・山田が昨年3月まで校長を務めた戦後生活教育の理念に基づき問題解決的学習過程で授業を展開してきた愛知教育大学附属岡崎中学校や同様の理念を掲げてきた中学校の実践と、実験的にフレネ教育をおこなうクラスを設置したフランスの中等教育プログラムである。

それゆえ、第1に、アクティブ・ラーニングがどのように対話的実践を成立させ、主体的で深い学びを実現できるのかについて検討できる。両実践を比較し、フレネ教育と生活教育の共通点と独自性から、「対話的実践」の役割や意義、課題と条件を明らかにすることができる。そこからアクティブ・ラーニングの可能性と課題を明らかにできる。

第2に、「対話的実践」を成立させるには、教科担任制である中等教育ではカリキュラム・マネジメントが重要になるが、対話的実践の成立とカリキュラム・マネジメントの関係を明らかにすることができる。 これらにより、2017年3月告示の学習指導要領おいて求められている「主体的で対話的で深い学び」とは何か、そしてどのような課題があり、どのような条件が必要になるのかを実践的かつ原理的に明らかにすることが期待できる。

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