Shitennoji University

令和3年度 科学研究費助成事業(科研費)令和3年度 採択課題 研究概要②

支配‐被支配関係から捉えるデートDVの実態

研究代表者氏名 上野 淳子
(ウエノ ジュンコ)
所属 人文社会学部
社会学科
職位 准教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 19K03356

研究の目的

従来のデートDV実態調査では、男性の方が暴力行為を多く受けていることが示されてきた。しかし、これらの調査は、暴力行為の頻度のみを尋ね、頻度が高ければデートDVの加害・被害も大きいと判断している点で問題である。暴力の本質は暴力行為そのものではなく、それが生み出す支配的関係性であるため、暴力行為に加え、その心理的結果である支配-被支配関係を把握すべきである。女性の暴力行為は相手へのダメージが少なく、支配-被支配関係の構築に与しない可能性がある。支配-非支配関係に着目すれば、軽く見られがちな精神的暴力が、どれだけ強固な支配-被支配関係の成立に寄与する重大な暴力かも検証できる。研究代表者はこれまで、支配-被支配関係を捉える「恋人による被支配感」項目を作成し、それを用いることでデートDVの真の被害の程度を把握できること、暴力行為を受けるのは男性が多くとも、女性の方が暴力行為で支配されやすく被害の程度が重いと言えることを示した。本研究の目的は、①「恋人による被支配感」項目の信頼性・妥当性を高めて尺度として完成させ、②支配-被支配関係と暴力行為の相互性について交際中のカップルも対象とした実態調査を行い、③ジェンダーとデートDV加害-被害の対応とメカニズムを解明することである。

期待される研究成果

本研究により得られた知見は、臨床での援助や予防教育に効果的に活用することができる。デートDVの実態とメカニズムが判明すれば、一見デートDVのようだがそうではない行為(ex.身体的暴力が頻繁でも軽く叩く程度であり、恐怖心がなく別れたければ別れられる)、巧妙に支配-被支配関係が築かれる見えにくいデートDV(ex.あからさまではないが継続的精神的暴力があり、恐怖心で逃れられない)、たった一回でもそれにより強固な支配-被支配関係が確立される暴力行為などを区別して把握することができ、どのような暴力行為が支配-被支配関係の成立と維持に影響するか明らかにできる。また、「性的暴力以外はむしろ女性が加害者である」という従来の結果を検証できる。女性の暴力行為は頻度が高くても支配-被支配関係の成立に寄与せず、デートDVにおいても女性は被害者となるケースが多いという臨床的知見が支持されるのか、それとも女性は巧妙な暴力行為を駆使して相手を支配するという結果が得られるのかによって、デートDVの今後の予防教育、被害者支援の方向性が左右される。さらに、本研究によって開発される支配-被支配関係を測定する方法は、パワーと支配をめぐるデートDV以外の領域(DV、虐待、ハラスメント等)でも応用可能である。

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司法面接における開示への動機づけを高める要因の研究

研究代表者氏名 田中 晶子
(タナカ アキコ)
所属 人文社会学部
社会学科
職位 准教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 19K03376

研究の目的

虐待被害は子どもが報告することが難しく,非開示の問題として近年司法面接研究において主要な関心事となっている。本研究では,非開示における子どもの動機づけのありように即した働きかけを検討することを目的とし,研究活動を行う。本研究によって得られた成果に基づき,非開示の子どもへの適切な対処に関するガイドラインを作成し,虐待対応にあたる実務家へ実証的知見を提供することを目指す。

期待される研究成果

期待される成果として,①ラポール形成を重視した修正版(RP版)NICHD(米国国立子どもの保健発達研究所; National Institute of Child health and Human Development)プロトコルを参考に,情報開示への動機づけと面接内でのラポール形成が,面接内での開示へ及ぼす影響について実験的に検証し明らかにする。②面接前のサポーティブな連携が,面接内での子どもの開示に及ぼす影響について探索的に検証し明らかにする。③動機づけは高いにも関わらず話せない子どもについて,トラウマ記憶研究における自伝的記憶の概括化の観点から非開示が生じる要因について文献研究により明らかにする。さらに,これらの研究成果を総括し,ガイドラインとしてまとめることにより,子どもの非開示を体系的にとらえる枠組みを提供し,非開示への適切な対処法に関する実証的知見を実務家へ提供することを目指している。

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重度・慢性精神障害者のセルフケア能力強化包括的支援マネジメントモデルの開発

研究代表者氏名 宇佐美しおり
(ウサミ シオリ)
所属 看護学部
看護学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 20K10821

研究の目的

国内外において重度・慢性精神障害(入院1年以上のBPRS45点以上,行動障害や生活障害を有する患者)のセルフケア能力強化を基盤とした包括的支援マネジメントに関する研究は皆無である。そこで本研究は,重度・慢性精神障害者のセルフケア能力強化を基盤とした包括的支援マネジメントモデルの開発を行う。モデルの開発においては重度・慢性精神障害者のセルフケア能力強化を基盤とした包括的支援マネジメントプロトコールを作成し信頼性・妥当性の検討を行い,プロトコールをもとに介入を行い評価する。

期待される研究成果

本研究を行うことで,①重度・慢性精神障害者の長期入院を減らし,②国内外で初めての重度・慢性精神障害者に対するセルフケア能力強化を基盤とした包括的支援マネジメントプロトコールの開発ができるだろう。さらに③重度・慢性精神障害者に対する多職種協働・病院-地域連携モデルにおける看護の役割・機能が明確となり学際的,学術的意義が高い。

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乳幼児の事故を予防するための母親のコンピテンシー尺度の開発

研究代表者氏名 眞壁美香
(マカベ ミカ)
所属 看護学部
看護学科
職位 助教
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 20K11118

研究の目的

不慮の事故は乳幼児期の死因順位において上位を占め、乳幼児の生命および健康の重要課題であり、より効果的な事故予防対策を検討することが急務である。乳幼児期においては保護者を中心とした事故予防対策行動に焦点が当てられているが、これには子どもの発達を見通すことや環境のリスクをアセスメントするという複雑な能力が求められる。乳幼児の事故を予防するために、母親が危険リスクを適切に判断し、事故予防対策を実践するために必要なコンピテンシー(事故予防実践能力)を明らかにし、実践につながる背景を理解する必要がある。そこで、本研究は乳幼児を育てる母親の事故予防に関するコンピテンシーを明らかにし、尺度開発を行うことを目的とする。

期待される研究成果

乳幼児の事故を予防するための母親のコンピテンシー尺度ができることで、事故予防対策行動につながる能力を査定し、リスクが把握可能となり、必要な支援を考える際の一助となる。さらに、母親の事故予防コンピテンシーが明らかになることで、今後、コンピテンシーが低いものへの支援方法を含めたプログラム開発へとつながる可能性がある。

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ハンセン病療養所における生と再生――個人情報保護とアーカイヴ化の可能性

研究代表者氏名 田原 範子
(タハラ ノリコ)
所属 人文社会学部
社会学科
職位 教授
研究種目 挑戦的萌芽 研究課題番号 20K20737

研究の目的

本研究の目的は、【1】自己責任が強調され、非寛容な傾向が進む現代社会において、ハンセン病にかかわる人びとの生と自分の人生を交差させることで、生きる意味を再考することである。さらに、個人情報や資料にはハンセン病の社会史が刻まれ、社会性・公共性が備えている。そこで名前や地域の匿名化により情報が失われれば、一人一人の生の軌跡を十分に照射できない。【2】個人情報保護の観点から、質的データの公共性・社会性をいかに実現するかを模索し、アーカイヴ・ルールの確立とアーカイヴ・システムの構築を試みる。

期待される研究成果

調査資料の管理保存と共有公開という矛盾をはらむ二つのものを架橋することを試みる本研究は、史料や資料の保管・管理・公開のあり方を議論するなかで、ハンセン病にかかわる研究者や各療養所と連携する可能性をもたらすと期待される。

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数論的多様体の幾何学と数論的正値性

研究代表者氏名 生駒英晃
(イコマ ヒデアキ)
所属 教育学部
教育学科
職位 講師
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 20K03548

研究の目的

代数多様体上の有理点の研究を行う上で、計量の付いた直線束のノルムの小さい大域切断を考えることが大変重要です。例えばこのような切断は、超越数論における補助関数の役割を果たします。私はこのノルムの小さい切断に、零点集合上の重複度の条件(基底条件)を課した上で、その存在や個数の問題を考えました。本研究の目的は、計量付き直線束と基底条件の組に対して高さ関数を定義し、それを有理点の問題に応用することです。具体的な計算が可能な、曲線の場合やトーリック多様体の場合を確認した後、一般の場合を調べる計画です。

期待される研究成果

代数多様体上の有理点の問題は、数論幾何学において中心的で非常に長い歴史をもつ研究対象です。また、大域体上の数論幾何学であるアラケロフ幾何学において、数論的正値性の問題が大変重要です。本研究を通じて、これらの問題に、新しい概念と道具を確立することができると期待されます。

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高齢化が進むニュータウンでの住民が実践できる閉じこもり改善支援プログラムの開発

研究代表者氏名 大橋純子
(オオハシ ジュンコ)
所属 看護学部
看護学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 20K11036

研究の目的

本研究の目的は、高齢者の閉じこもり原因の8割が心理的要因であることに着目。申請者らが先の研究で開発してきた主観的QOLや精神健康度の改善効果が示唆される集団コーチングプログラムを、閉じこもり高齢者に適する自己効力向上を軸とした個別支援型プログラムに応用、無作為化比較試験結果に加えプログラム研修を受けたボランティアの実践評価から心理的閉じこもり指標改善に有効で、かつ地域住民が実践できるプログラムの開発を行うことである。

期待される研究成果

急速な高齢化率の増加により、社会資源の整備が追い付ていない状況である。閉じこもり高齢者は、老化による体力低下に加え主観的QOLの低下やうつ傾向を生じやすく、閉じこもりから廃用症候群を来し要介護状態となるリスクが高い。そのため高齢者の中でも取り分け支援が必要な対象である。高齢者の閉じこもりは65歳以上の30%に存在し、要介護リスクが高いことから超高齢社会を迎えた我国では社会問題となっている。

このような背景の中、閉じこもり原因の1要因として、自己効力感、主観的QOL、抑うつ感など心理的要因があることから、これら改善を目的とした本プログラムの有効性と地域での実践可能性が確認できれば、①地域包括ケアシステムが目指す住民互助の力を活用した高齢者の介護保険移行予防システムに繋がることが期待できる。また、②社会福祉協議会ボランティアの協力を得て行うため、地域で実践可能な高齢者の健康支援策として広く社会に普及する可能性がある。

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The Effects of Reading-While-Listening and Strategy Instruction on L2 Listening

研究代表者氏名 Eric Martin
(マーティン エリック)
所属 教育学部
教育学科
職位 講師
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 21K00594

研究の目的

This research will address gaps in extensive comprehensive input and listening research to investigate incidental acquisition of listening vocabulary growth, the scaffolding needs of learners of varying proficiency when developing their L2 listening ability, and the effects of mass comprehensive input on L2 listening self-efficacy.

期待される研究成果

For L2 learners and teachers, the results of this study will elucidate effects of extensive listening as a language learning activity. Teachers can use this information to consider whether this activity might be appropriate for their students' needs. For researchers of applied linguistics, the results of this study should provide insight into how the effects of extensive listening compare and contrast with those of extensive reading on learners' vocabulary knowledge growth. It should also provide new insights into whether long periods of listening to English will promote learners' listening self-efficacy. For researchers of psycholinguistics, the results should provide insight into the features of spoken English that Japanese learners of English are able when receiving mass amounts of comprehensive aural input Understanding why certain features become easier to understand, while others do not, would provide insight into how learners process L2 listening.

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妊娠期から産褥期の母親による歌唱の胎児・新生児への愛着促進の効果

研究代表者氏名 宮本 雅子
(ミヤモト マサコ)
所属 看護学部
看護学科
職位 准教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 21K10868

研究の目的

本研究は,妊娠期から継続して産後にかけて母親が歌唱することによる母親の子どもに対する愛着促進の効果を明らかにすることを目的とする。愛着理論(Bowlby,1973)のモデルに基づき,母親から子へ,子から母親へ相互作用が進んでいく点から,歌唱による子どもへの愛着が高まることが予測される。助産師による教育的支援は,産後にかけて育まれる母子間愛着形成,さらには出産・育児期の母親役割獲得につながることが考えられるため,健康教育と継続的に歌唱するようワークショップを行う。妊婦が歌唱することで,元気さや心地よいと感じるなどの肯定的な感情が高まることが明らかであり,子守歌の歌唱は胎児への関心が高まることが考えられる。

期待される研究成果

  • 1.歌唱の実施前後の感情の変化を感情尺度と質的な意見や感想(歌唱後の気持ちの変化と胎児・乳児への思い:うた日記)により明らかにする。楽しさ・元気をもらう,リラックスなどの肯定的な感情を得ることが期待される。
  • 2.歌唱したグループは,健康教育と歌唱を続けて行うことで,胎児への愛着(胎児愛着尺度)や乳児への愛着(母親の愛着尺度)の変化を明らかにする。愛着は妊娠期から高まり,産後も高まっていくことが期待される。
  • 3.歌唱前後と産前・産後のクラスで,うつ尺度の測定値の分析を行い,ストレス・肯定的感情・リラックスレベルを客観的に評価する。歌唱により,ストレスや不安は低下し,肯定的感情が一時的に高まることが期待される。

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熟練訪問看護管理者の臨床判断の可視化による訪問看護導入期の看護実践ガイドの開発

研究代表者氏名 小林裕美
(コバヤシ ヒロミ)
所属 看護学研究科 職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 21K11067

研究の目的

不慮の事故は乳幼児期の死因順位において上位を占め、乳幼児の生命および健康の重要課題であり、より効果的な事故予防対策を検討することが急務である。乳幼児期においては保護者を中心とした事故予防対策行動に焦点が当てられているが、これには子どもの発達を見通すことや環境のリスクをアセスメントするという複雑な能力が求められる。乳幼児の事故を予防するために、母親が危険リスクを適切に判断し、事故予防対策を実践するために必要なコンピテンシー(事故予防実践能力)を明らかにし、実践につながる背景を理解する必要がある。そこで、本研究は乳幼児を育てる母親の事故予防に関するコンピテンシーを明らかにし、尺度開発を行うことを目的とする。わが国では、在宅医療が推進されているが、その中で、在宅ケアサービス事業所の一つである訪問看護ステーションの数も漸増している。しかし、量の拡大とともに看護サービスの質の低下が懸念されている。そこで本研究は、熟練の訪問看護管理者が訪問看護を導入する際の実践と判断がその後の看護サービスの質を方向付けていることに着目し、これらを明らかにし、訪問看護ステーションの質向上に寄与できるように取り組むものである。

本研究の目的は、訪問看護導入期の看護実践におけるエキスパートレベルの臨床判断を抽出し、実践で適用可能な看護実践ガイドとして可視化することである。具体的には、熟練訪問看護管理者の訪問看護導入期の臨床判断を明らかにし、その成果を元に訪問看護実践者と共に『訪問看護実践ガイド』の作成を行う。

期待される研究成果

本研究における「訪問看護実践ガイド」とは、訪問看護の専門的・意図的な実践をある方向に導き、構造を含んだもので、ガイドラインやチェックリストとは異なる。

訪問看護導入期の訪問看護実践ガイドが作成できれば、地域で看護実践している訪問看護管理者に対し直接的に活用できるツールとして提供でき、訪問看護サービスの質向上に向けた人材育成に貢献できると考える。

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