Shitennoji University

令和2年度 科学研究費助成事業(科研費)令和2年度 採択課題 研究概要③

数論的多様体の幾何学と数論的正値性

研究代表者氏名 生駒英晃
(イコマ ヒデアキ)
所属 教育学部
教育学科
職位 講師
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 20K03548

研究の目的

代数多様体上の有理点の研究を行う上で、計量の付いた直線束のノルムの小さい大域切断を考えることが大変重要です。例えばこのような切断は、超越数論における補助関数の役割を果たします。私はこのノルムの小さい切断に、零点集合上の重複度の条件(基底条件)を課した上で、その存在や個数の問題を考えました。本研究の目的は、計量付き直線束と基底条件の組に対して高さ関数を定義し、それを有理点の問題に応用することです。具体的な計算が可能な、曲線の場合やトーリック多様体の場合を確認した後、一般の場合を調べる計画です。

期待される研究成果

代数多様体上の有理点の問題は、数論幾何学において中心的で非常に長い歴史をもつ研究対象です。また、大域体上の数論幾何学であるアラケロフ幾何学において、数論的正値性の問題が大変重要です。本研究を通じて、これらの問題に、新しい概念と道具を確立することができると期待されます。

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高齢化が進むニュータウンでの住民が実践できる閉じこもり改善支援プログラムの開発

研究代表者氏名 大橋純子
(オオハシ ジュンコ)
所属 看護学部
看護学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 20K11036

研究の目的

本研究の目的は、高齢者の閉じこもり原因の8割が心理的要因であることに着目。申請者らが先の研究で開発してきた主観的QOLや精神健康度の改善効果が示唆される集団コーチングプログラムを、閉じこもり高齢者に適する自己効力向上を軸とした個別支援型プログラムに応用、無作為化比較試験結果に加えプログラム研修を受けたボランティアの実践評価から心理的閉じこもり指標改善に有効で、かつ地域住民が実践できるプログラムの開発を行うことである。

期待される研究成果

急速な高齢化率の増加により、社会資源の整備が追い付ていない状況である。閉じこもり高齢者は、老化による体力低下に加え主観的QOLの低下やうつ傾向を生じやすく、閉じこもりから廃用症候群を来し要介護状態となるリスクが高い。そのため高齢者の中でも取り分け支援が必要な対象である。高齢者の閉じこもりは65歳以上の30%に存在し、要介護リスクが高いことから超高齢社会を迎えた我国では社会問題となっている。

このような背景の中、閉じこもり原因の1要因として、自己効力感、主観的QOL、抑うつ感など心理的要因があることから、これら改善を目的とした本プログラムの有効性と地域での実践可能性が確認できれば、①地域包括ケアシステムが目指す住民互助の力を活用した高齢者の介護保険移行予防システムに繋がることが期待できる。また、②社会福祉協議会ボランティアの協力を得て行うため、地域で実践可能な高齢者の健康支援策として広く社会に普及する可能性がある。

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ハンセン病療養所における生と再生――個人情報保護とアーカイヴ化の可能性

研究代表者氏名 田原 範子
(タハラ ノリコ)
所属 人文社会学部
社会学科
職位 教授
研究種目 挑戦的萌芽 研究課題番号 20K20737

研究の目的

本研究の目的は、【1】自己責任が強調され、非寛容な傾向が進む現代社会において、ハンセン病にかかわる人びとの生と自分の人生を交差させることで、生きる意味を再考することである。さらに、個人情報や資料にはハンセン病の社会史が刻まれ、社会性・公共性が備えている。そこで名前や地域の匿名化により情報が失われれば、一人一人の生の軌跡を十分に照射できない。【2】個人情報保護の観点から、質的データの公共性・社会性をいかに実現するかを模索し、アーカイヴ・ルールの確立とアーカイヴ・システムの構築を試みる。

期待される研究成果

調査資料の管理保存と共有公開という矛盾をはらむ二つのものを架橋することを試みる本研究は、史料や資料の保管・管理・公開のあり方を議論するなかで、ハンセン病にかかわる研究者や各療養所と連携する可能性をもたらすと期待される。

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ポスト・リスクモデルの犯罪者処遇に関する比較歴史犯罪学的研究

研究代表者氏名 平井 秀幸
(ヒライ ヒデユキ)
所属 人文社会学部
社会学科
職位 准教授
研究種目 若手研究(B) 研究課題番号 17K18261

研究の目的

本研究は、近年の先端的研究において犯罪者処遇の新たなグローバル・パラダイムとして徐々に注目されつつあるポスト・リスクモデルの犯罪者処遇に関して、薬物事犯者処遇を具体的事例として犯罪学・矯正教育社会学の観点から経験的・理論的・政策科学的に考察することを目的とする。

期待される研究成果

本研究はポスト・リスクモデルの犯罪者処遇を2000年代以降の犯罪学・矯正教育社会学の重要理論概念のひとつである「新自由主義(neoliberalism)」と結びつけて理論化しようとする野心を有している。新自由主義は従来、厳罰化や民営化など犯罪者処遇の縮小を正当化する政治的合理性であり、新たに登場した認知行動療法や犯罪当事者活動は犯罪者を社会的に再包摂する“新自由主義に抗するオルタナティヴ”だと好意的に評価されることが多かった。しかし、リスク的処遇は適切なリスク回避ができない非再帰的主体を、非リスク的処遇は社会参加をめざさない非市民的主体を、それぞれ排除する新自由主義的処遇となる恐れがある。心理療法から当事者活動まで、実に多様な実践から成るポスト・リスクモデルの犯罪者処遇を新自由主義化する現代社会・刑事司法のなかに位置づけることで、本研究は犯罪学や矯正教育社会学に留まらない広い学術的インパクトを有するだろう。

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言語適性は語彙学習ストラテジーにおいてどのような役割を果たすのか

研究代表者氏名 麻生 迪子
(アソウ ミチコ)
所属 人文社会学部
日本学科
職位 講師
研究種目 若手研究 研究課題番号 18K12436

研究の目的

本研究は,日本語学習者の情報獲得能力の向上を目指し,未知語意味理解ストラテジーの指導法の開発を試みる。どのような学習者が,どのような未知語意味理解ストラテジーの利用を効果的に行えるのかを言語適性の観点から検討し,語彙学習の負担を軽減する指導法の開発を行う。具体的な研究課題は,3つである。

  • (1)言語適性は,未知語意味理解ストラテジー能力と関連があるのか。
  • (2)言語適性は,未知語意味理解ストラテジー能力を予測するか。
  • (3)未知語意味理解能力の観点から学習者は,どのような適性プロフィールの観点 に分類できるか。

期待される研究成果

本研究の成果により,学習者の適性にあった語彙指導方法の開発を行うことができる。これは,日本語教育における語彙指導時間の短縮をもたらす。また,従来,言語ストラテジーは,個人差の外的要因として単体で論じられることが多かったが,言語適性という内的要因という観点で論じることから,個人差という概念を複合的にとらえ,第二言語習得の本質に迫ることができる。

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腎移植レシピエントの性の健康を支援するアプローチの検討

研究代表者氏名 吉川 有葵
(ヨシカワ ユキ)
所属 看護学部
看護学科
職位 准教授
研究種目 若手研究 研究課題番号 18K17590

研究の目的

腎移植で期待される効果の一つに性機能の改善がある。腎移植を受けた女性は月経の再開により妊孕率は回復するが、生児獲得率は一般女性より低い。一方、腎移植を受けた男性は、黄体ホルモン・卵胞刺激ホルモン・プロラクチンの改善、勃起機能、精子濃度と運動性が改善するが、自覚的性機能の改善は乏しい。男女ともに生殖機能や性生活における心理的負担は大きく、性機能を取り巻く心理的側面の改善には至っておらず、レシピエントは性の健康に問題を抱えている。本研究では腎移植レシピエントにおける性の健康、QOLの維持・向上につなげるため、腎移植レシピエントの性機能およびQOL、性機能を取り巻く要因との関連を明らかにし、腎移植レシピエントの性の健康を支援するアプローチモデルを開発する。

期待される研究成果

腎移植は透析療法と比較して妊孕率という身体的側面の改善は認められるが(岸川,1998)(永野,1998)、男女ともに生殖機能や性生活を取り巻く心理的側面の改善には至っておらず(Hamoud H,2009)(KDIGO GUIDELINES,2009)(岸川,1998)、レシピエントは性の健康に問題を抱えている可能性がある。移植医療の進歩により移植後に妊娠・出産するレシピエントは増加している。妊娠・出産に至るにはレシピエントの性機能の改善、健康的な性生活が必要不可欠だが、わが国の文化的背景から軽視される傾向にある。レシピエントは生涯、免疫抑制剤の内服を避けられず、不安や苦悩、葛藤、希望といった様々な心理状態にあり(Tong A,2015)、このような要因が性の健康に影響を及ぼしている可能性が考えられる。本研究で腎移植レシピエントの性機能およびQOL、性機能を取り巻く要因との関連を明らかにすることは、レシピエントが抱えている表面化していない問題の解決が期待でき、慢性疾患を抱えながら性の健康を維持し、安全な妊娠・出産につなげ得るものになると考える。

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がん関連倦怠感を緩和するマインドフルネスを用いた音楽療法プログラムの開発

研究代表者氏名 池内 香織
(イケウチ カオリ)
所属 看護学部
看護学科
職位 准教授
研究種目 若手研究 研究課題番号 19K19588

研究の目的

倦怠感は、がん患者が最も高頻度に経験する症状であり、QOLを阻害する症状である。しかしながら、倦怠感に対するケアはいまだ不十分であり、効果的な緩和方法は限られている。

そこで本研究では、がんサバイバーの倦怠感に対する新たなケア方法として、倦怠感に対する患者負担の少ないマインドフルネスを用いた音楽療法プログラムを開発し、その効果を検証することを目的とする。

期待される研究成果

倦怠感は、がん患者が最も多く経験する症状であり、生活への影響が大きくQOL (Quality of life)を阻害する症状である。がん患者が増加する中で、患者のQOL向上のためには倦怠感に対する効果的なケアの開発が課題である。

そこで、本研究では、

  • ①がん患者の倦怠感の特徴を明らかにすることができる。
  • ②がん患者の治療期に応じた、患者負担の少ない倦怠感ケアの開発ができる。
  • ③マインドフルネスを用いた音楽療法プログラムは最終的にはセルフケア可能な技法となり、倦怠感緩和のセルフケアを日常生活に取り入れることは患者のQOL の向上につながる。

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古典期ローマにおける相続と贈与

研究代表者氏名 後藤 弘州
(ゴトウ ヒロクニ)
所属 経営学部
経営学科
公共経営専攻
職位 講師
研究種目 若手研究 研究課題番号 20K13308

研究の目的

現代において相続と贈与の間に深い関係があることはよく知られており、そのことは古典期ローマにおいても変わらない。本研究は具体的な事例を検討することにより、古典期ローマにおける相続と贈与の関係について明らかにすることを目的とする。ここでいう贈与には死因贈与も含まれ、生前贈与と死因贈与の関係についても研究対象としている。

期待される研究成果

  • 古典期ローマの相続における死因贈与の働きについて明らかになる。
  • 古典期ローマにおける生前贈与と死因贈与の関係について明らかになる。
  • 古典期ローマにおける相続実務についての理解が深まる。

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子どもの自死や生きづらさに応答する教師の人間観および死生観の解明

研究代表者氏名 福若 眞人
(フクワカ マサト)
所属 教育学部
教育学科
職位 講師
研究種目 若手研究 研究課題番号 20K13990

研究の目的

日本では10代の自死の状況を受けて、自殺予防に焦点化した学習だけでなく、道徳教育や健康教育など、多様な実践が取り組まれてきた。しかし、そうした実践のなかで教師(大人)の果たす役割や、教師の人間観や死生観が子どもに与える影響について、十分に検討されているとは言えない。プログラムや技法が洗練されたとしても、教師の価値観の伝わり方によって、支援を必要とする子どもを疎外する可能性がある。教師の価値観を問い直すことが、自殺予防に必要とされる「信頼できる大人」として希死念慮などの生きづらさを抱える子どもに応答することに、新たな手がかりを提供すると考えられる。

以上のことを踏まえて、本研究は次の4つの課題に取り組むことを目的とする。

  • (1)自殺予防に取り組んできた教師に内在する人間観や死生観の特徴を抽出する。
  • (2)教師の用いる「ことば」について、哲学的・心理学的な知見を手がかりに、その特徴を明らかにする。
  • (3)「信頼できる大人」の資質や能力を、子どもの生きづらさの分析から導出する。
  • (4)自殺予防教育や生きづらさを抱える子どもへの応答についての教師(大人)のあり方を、教師教育の観点から検討する。
  • 期待される研究成果

    本研究のそれぞれの課題を通じて、次の3つの成果が期待される。

    • (1)教師向けの自殺予防プログラムにおいては、教師間の連携や自死の問題に取り組むための正しい知識理解や、問題解決能力などの向上が狙いとされてきたことに対し、本研究は教師の内面にある人間観や死生観にまで踏み込んだ分析を行う。哲学的な知見や心理学的な知見を手がかりとした検討を行うことで、自死や生きづらさに応答する関わり方の新たな観点を見出すことが期待される。
    • (2)自殺予防に取り組む教師へのインタビューを行うなかで、語り手が独自に意味づけた「ことば」の有無を確認し、教師の人間観や死生観の理解を問い直す手がかりを摸索する。それにより「信頼できる大人」に求められる資質や能力を検討するとともに、「ことば」に着目した自殺予防教育を支える新たな教師教育プログラムを構想することが可能となる。
    • (3)医学系・心理学系の学会、カウンセリング学会、生徒指導学会など、自死に関連する学会で検討されてきた学校教育における自殺予防の取り組みを、本研究では教師教育の観点から捉え直す。教師が自らの人間観や死生観に向き合うことが、教師としての資質・能力の向上につながる点について指摘されてこなかったが、本研究を通じて対症療法的だった自殺予防教育を、教師の自己研鑽に接続させることが可能となる。

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    近代大阪の在野儒学者の研究―その経学と社会政治活動―

    研究代表者氏名 矢羽野 隆男
    (ヤハノ タカオ)
    所属 人文社会学部
    日本学科
    職位 教授
    研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 15K02093

    研究の目的

    従来〈儒学における西洋学の受容〉の研究対象となるのは、儒学を素養として西洋学を修めた「洋学者」が中心で、また明治期の儒学者を取り上げる研究も、多くは帝国大学など近代教育の中で活動した学者であった。在野の儒学者は対象外に置かれ、彼らが儒学を基礎に西洋学をいかに受容し、どのように活動したかは十分な研究がなされてこなかった。

    本研究は、近代大阪を代表する在野の儒学者で、中央にも積極的に働きかけた泊園書院の藤澤南岳、梅清処塾の山本梅崖らを対象に、日本漢学と日中交流史の研究者の共同研究によって、その経学(儒教の経典解釈学)における西洋学の受容、および清末知識人との交流、時事的発言など、経学および社会政治上の活動を多角的に解明してその思想史的意義を考察するものである。

    共同研究の分担は下記のとおりである。

    • A 経学および西洋学受容に関する思想史的考察:矢羽野隆男(研究代表者)
    • B 社会政治上の活動およびその思想史的考察:呂順長(研究分担者)

    期待される研究成果

    • 1.これまで研究対象外であった近代大阪の在野の儒学者を対象とすることで、近代思想史の空白を埋める点に意義がある。彼らは洋学者や官学の学者でないために見落とされた存在であったが、本研究により彼らを近代思想史上に正当に位置づけることができる。
    • 2.近代の儒学者の経学を正面から取り上げる点に新たな研究領域を拓く特色がある。近代思想史における経学研究は極めて手薄で、南岳・梅崖の著作も手付かずである。本研究により、大阪の儒学の経学研究から発展して〈近代儒学における経学〉の領域へ広がる可能性をもつ。
    • 3.国際的な人的交流を示す最新資料の活用により、大阪の儒学者の活動を東アジアを視野に入れた近代思想史において捉える点に先進的かつ普遍的な特色がある。梅崖ら大阪の儒学者と清末知識人・中国人日本留学生との交流記録、政府要路への意見書など最新資料の発掘分析により、近代の日本・中国の動きと連動する活動の思想史的意義の探究が可能となる。

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    コモンズという場所の性格に根差した地域管理政策

    研究代表者氏名 五十川 飛暁
    (イソガワ タカアキ)
    所属 人文社会学部
    社会学科
    職位 講師
    研究種目 基盤(C) 研究課題番号 16K04127

    研究の目的

    近年、地域社会のコモンズ空間は、従来のオーバーユースだけでないアンダーユースの問題も加わり、その管理の見直し論が盛んである。そして、その特徴であった控除性と排除性を避けつつ、どう多様なガバナンスを形成していくかが課題となっている。ただ、そうやって多様性が模索されるガバナンス空間は、他方でその意味内容としてはたいへん画一化に向かっているように思われる。とするなら、それとは異なる管理論を考えておくことにも価値があるに違いない。本研究では、コモンズ空間が歴史的に備えてきた重層性や可変性という特徴にあらためて注目し、その特徴を前提につきあってきた人びとのつきあい方から、地域社会の空間管理にあらたな選択肢を提示することを目的としている。

    期待される研究成果

    本研究の目的を達成するため、いくつかの事例地を選定しながら、フィールドワークを実施していく。地域コミュニティ内には、従来コモンズをめぐる議論が注目してきた共有地やその共有をめぐる仕組みだけでなく、私有地や公有地といったさまざまな色合いをもつ空間が存在する。今回の研究では、コモンズ空間としてとくに共有地に限定することなく、コモンズ性があらわれる場所という観点から選定をおこなっていく。また、実際の調査の際には、空間そのものというよりも、その空間とかかわってきた地域社会のほうにポイントをおき、現場の地域生活を把握すること、および、そこからの検討を重視していく。そこで得られるであろう、人びとの生活の論理からは、学問的にはコモンズをめぐる議論を批判的に発展させることができるだろうし、政策論的にも、地域空間の管理のあり方について模索している各地の人びとが、自分たちの今後を考える際の判断材料を提供できるのではないかと想定している。

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