Shitennoji University

令和元年度 科学研究費助成事業(科研費)令和元年度 採択課題 研究概要③

成年後見活動における「意思決定支援ツール」の開発

研究代表者氏名 笠原 幸子
(カサハラ サチコ)
所属 人文社会学部
人間福祉学科
健康福祉専攻
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 19K02230

研究の目的

認知症、知的障がい、精神障がい等のために意思決定能力が不十分な人たちは、自ら意思決定しながら、その人生を自律的に生きているとは言い難い。意思決定能力が不十分な被後見人を支援する後見人の役割は重要である。意思尊重と保護という対極にある理念の中で、被後見人の意思を尊重しつつ最善の利益を追求することが求められる。

そこで、本研究では、1)福祉・医療・法律に関わる専門職から構成されるチームによって、支援現場に密着し、被後見人の意思決定を支える支援の実態を明らかにする、2)異なる背景の専門性をもつ後見人が存在するなかで、被後見人(親族を含む)ならびに支援機関との連携の中で求められている後見人としての役割と専門性を明らかにする、これらの研究から得られた知見より、最終的には、3)後見人が活用できる具体的な「意思決定支援のツール」を作成することを目的とする。

期待される研究成果

  • 1.意思決定支援活動の実態を明らかにし、成年後見人の役割やその専門性の明らかにすることは、成年後見人の専門性の向上に寄与する。
  • 2.成年後見人の専門性の向上に連動して、成年後見活動の社会化に連動する。
  • 3.「意思決定支援ツール」の開発は、意思尊重義務と身上配慮義務の狭間で活動している成年後見人の揺らぎを最小限にし、被後見人のQOLの向上に寄与する。
  • 4.専門職チームによる研究活動から得られた知見や成果物(「意思決定支援ツール」)は、成年後見活動をする者を、真に支援すると考える。
  • 5.上記1~4より得られた知見は、①成年後見人の養成のための研修、 ②成年後見人の適切な活動のための支援、さらには、成年後見人の活動を安定的に実施するための組織体制の構築においても寄与すると考える。

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理科教育の現代的課題の解決を図るマイクロスケール実験による個別実験と授業デザイン

研究代表者氏名 佐藤 美子
(サトウ ヨシコ)
所属 教育学部
教育学科
職位 准教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 19K02692

研究の目的

児童・生徒の主体的な学習を支援する実験方法としてマイクロスケール実験を取り上げ、教材開発と授業デザインの提案を通して、学校現場への普及を図ることを目的とする。

第1に、マイクロスケール実験による個別実験が適した学習内容の抽出と教材化をり、主体的な学習を支援する実験方法を提案する。次に、思考力の育成に向けた新しい授業展開、詳細な観察による考察の深化、実感を伴った理解の促進等を目指す。

本研究では、特に呈色板やパックテスト容器等の市販品を応用して、より安価で安全な実験器具を用いて学校現場への普及に取り組む。

授業実践では、主に小学校教員志望の学生に、理科の指導力向上を目指して実験を含む授業を多く体験させる。また、小学校・中学校・高等学校の各学校の理科授業で活用できる授業デザインの研究を現場の先生方と実施する。また、ICTを積極的に用いた授業デザインの構築と学校現場への提供も積極的に行う。海外の学校現場における実験授業の視察を通して、日本の教育事情に応じた特色ある教材開発と授業デザインの構築も検討する。

期待される研究成果

研究期間(4年)においては今までの研究の継続を基本とする。マイクロスケール実験の特徴を生かし、同時に次期学習指導要領に対応すべく、教材開発と実践活動並びに新しい授業デザインの構築、研究会を通した活動を行う。マイクロスケール実験の学校現場への普及が進むことが研究成果として期待される。

本研究では 1.教材開発 2.授業デザインの作成 3.授業実践と研究会の活動 4.授業分析と総括 5.実践結果のフィードバック  が大きな柱となり、学外者の研究の下で行う。特に理科教育学会における課題研究発表は、10年にわたって継続的に行っているが、本研究の研究期間内においても積極的に成果発表の場として活用する。

研究成果の発表は主に関係学会の論文誌(理科教育学研究、科学教育研究など)への投稿、学会発表(理科教育学会、科学教育学会など)を通して積極的に行い、議論の成果を踏まえ、マイクロスケール実験の普及を図る。

研究成果の社会的還元としては「ひらめき☆ときめきサイエンス」(JSPS主催)を行う。2019年度で4回目の実施となるが、主に中学生と高校生を対象とする実験教室であり、開発した教材実験の実践の場として活用する。

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支配‐被支配関係から捉えるデートDVの実態

研究代表者氏名 上野 淳子
(ウエノ ジュンコ)
所属 人文社会学部
社会学科
職位 准教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 19K03356

研究の目的

従来のデートDV実態調査では、男性の方が暴力行為を多く受けていることが示されてきた。しかし、これらの調査は、暴力行為の頻度のみを尋ね、頻度が高ければデートDVの加害・被害も大きいと判断している点で問題である。暴力の本質は暴力行為そのものではなく、それが生み出す支配的関係性であるため、暴力行為に加え、その心理的結果である支配-被支配関係を把握すべきである。女性の暴力行為は相手へのダメージが少なく、支配-被支配関係の構築に与しない可能性がある。支配-非支配関係に着目すれば、軽く見られがちな精神的暴力が、どれだけ強固な支配-被支配関係の成立に寄与する重大な暴力かも検証できる。研究代表者はこれまで、支配-被支配関係を捉える「恋人による被支配感」項目を作成し、それを用いることでデートDVの真の被害の程度を把握できること、暴力行為を受けるのは男性が多くとも、女性の方が暴力行為で支配されやすく被害の程度が重いと言えることを示した。本研究の目的は、①「恋人による被支配感」項目の信頼性・妥当性を高めて尺度として完成させ、②支配-被支配関係と暴力行為の相互性について交際中のカップルも対象とした実態調査を行い、③ジェンダーとデートDV加害-被害の対応とメカニズムを解明することである。

期待される研究成果

本研究により得られた知見は、臨床での援助や予防教育に効果的に活用することができる。デートDVの実態とメカニズムが判明すれば、一見デートDVのようだがそうではない行為(ex.身体的暴力が頻繁でも軽く叩く程度であり、恐怖心がなく別れたければ別れられる)、巧妙に支配-被支配関係が築かれる見えにくいデートDV(ex.あからさまではないが継続的精神的暴力があり、恐怖心で逃れられない)、たった一回でもそれにより強固な支配-被支配関係が確立される暴力行為などを区別して把握することができ、どのような暴力行為が支配-被支配関係の成立と維持に影響するか明らかにできる。また、「性的暴力以外はむしろ女性が加害者である」という従来の結果を検証できる。女性の暴力行為は頻度が高くても支配-被支配関係の成立に寄与せず、デートDVにおいても女性は被害者となるケースが多いという臨床的知見が支持されるのか、それとも女性は巧妙な暴力行為を駆使して相手を支配するという結果が得られるのかによって、デートDVの今後の予防教育、被害者支援の方向性が左右される。さらに、本研究によって開発される支配-被支配関係を測定する方法は、パワーと支配をめぐるデートDV以外の領域(DV、虐待、ハラスメント等)でも応用可能である。

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司法面接における開示への動機づけを高める要因の研究

研究代表者氏名 田中 晶子
(タナカ アキコ)
所属 人文社会学部
社会学科
職位 准教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 19K03376

研究の目的

虐待被害は子どもが報告することが難しく、非開示の問題として近年司法面接研究において主要な関心事となっている。本研究では、非開示における子どもの動機づけのありように即した働きかけを検討することを目的とし、研究活動を行う。本研究によって得られた成果に基づき、非開示の子どもへの適切な対処に関するガイドラインを作成し、虐待対応にあたる実務家へ実証的知見を提供することを目指す。

期待される研究成果

期待される成果として、①ラポール形成を重視した修正版(RP版)NICHD(米国国立子どもの保健発達研究所; National Institute of Child health and Human Development)プロトコルを参考に、情報開示への動機づけと面接内でのラポール形成が,面接内での開示へ及ぼす影響について実験的に検証し明らかにする。②面接前のサポーティブな連携が,面接内での子どもの開示に及ぼす影響について探索的に検証し明らかにする。③動機づけは高いにも関わらず話せない子どもについて,トラウマ記憶研究における自伝的記憶の概括化の観点から非開示が生じる要因について文献研究により明らかにする。さらに、これらの研究成果を総括し、ガイドラインとしてまとめることにより、子どもの非開示を体系的にとらえる枠組みを提供し、非開示への適切な対処法に関する実証的知見を実務家へ提供することを目指している。

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アラケロフ幾何における正値性

研究代表者氏名 生駒 英晃
(イコマ ヒデアキ)
所属 教育学部
教育学科
職位 講師
研究種目 若手研究(B) 研究課題番号 16K17559

研究の目的

代数方程式系の有理数解の研究は、長い歴史をもち、非常に難しいが、大変魅力のある研究テーマです。 代数方程式系は一般に代数体上の代数多様体を定め、有理数解はその上の有理点を定めます。 有理点が代数多様体上どのように分布しているのかを調べるために、有理点の高さや、より一般に部分多様体の数論的次数という関数を用いますが、これらの量は計算が大変難しいことで有名で、性質もよくわかっていません。この研究の目的は、部分多様体の数論的次数やそれに関連する数論的制限体積について、基本的な性質の確立を目指すものです。

期待される研究成果

部分多様体の数論的制限体積や数論的次数を、数論的ニュートン・オコンコフ凸体という図形を用いて計算する方法が確立されます。 さらにこの結果を用いて、数論的曲面上の有理点の分布を詳しく調べられるようになります。

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地域での子ども包括支援に向けたセンター型支援の有効性の検証とあり方に関する研究

研究代表者氏名 吉田 祐一郎
(ヨシダ ユウイチロウ)
所属 教育学部
教育学科
職位 准教授
研究種目 若手研究(B) 研究課題番号 17K18260

研究の目的

本研究では、子どもの生活課題に関する相談窓口および直接的なサービスの実施が期待される母子健康包括支援センター(子育て世代包括支援センター)および児童家庭支援センターにおける役割について、児童相談所および関係機関との連携体制および支援体制の実際について調査する。この検証を通して、子ども・子育て支援における地域におけるセンター型相談支援体制の機能検証による必要性の提起と、相談者視点に立った相談に有効なアクセシビリティのあり方について検討する。

期待される研究成果

両センターでのこれまでの実践事例の整理および地域および関係機関との連携について捉えることから、センターの設置意義を明確にすることができる。あわせて児童虐待の対応に追われる児童相談所の実施体制についても、両センターが援助の一部を担う(役割分担する)ことにより、各々の機関の専門性を用いた援助実施を可能とする視座を導き出すことができると予測される。

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ポスト・リスクモデルの犯罪者処遇に関する比較歴史犯罪学的研究

研究代表者氏名 平井 秀幸
(ヒライ ヒデユキ)
所属 人文社会学部
社会学科
職位 准教授
研究種目 若手研究(B) 研究課題番号 17K18261

研究の目的

本研究は、近年の先端的研究において犯罪者処遇の新たなグローバル・パラダイムとして徐々に注目されつつあるポスト・リスクモデルの犯罪者処遇に関して、薬物事犯者処遇を具体的事例として犯罪学・矯正教育社会学の観点から経験的・理論的・政策科学的に考察することを目的とする。

期待される研究成果

本研究はポスト・リスクモデルの犯罪者処遇を2000年代以降の犯罪学・矯正教育社会学の重要理論概念のひとつである「新自由主義(neoliberalism)」と結びつけて理論化しようとする野心を有している。新自由主義は従来、厳罰化や民営化など犯罪者処遇の縮小を正当化する政治的合理性であり、新たに登場した認知行動療法や犯罪当事者活動は犯罪者を社会的に再包摂する“新自由主義に抗するオルタナティヴ”だと好意的に評価されることが多かった。しかし、リスク的処遇は適切なリスク回避ができない非再帰的主体を、非リスク的処遇は社会参加をめざさない非市民的主体を、それぞれ排除する新自由主義的処遇となる恐れがある。心理療法から当事者活動まで、実に多様な実践から成るポスト・リスクモデルの犯罪者処遇を新自由主義化する現代社会・刑事司法のなかに位置づけることで、本研究は犯罪学や矯正教育社会学に留まらない広い学術的インパクトを有するだろう。

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言語適性は語彙学習ストラテジーにおいてどのような役割を果たすのか

研究代表者氏名 麻生 迪子
(アソウ ミチコ)
所属 人文社会学部
日本学科
職位 講師
研究種目 若手研究 研究課題番号 18K12436

研究の目的

本研究は、日本語学習者の情報獲得能力の向上を目指し、未知語意味理解ストラテジーの指導法の開発を試みる。どのような学習者が、どのような未知語意味理解ストラテジーの利用を効果的に行えるのかを言語適性の観点から検討し、語彙学習の負担
を軽減する指導法の開発を行う。具体的な研究課題は、3つである。

  • (1)言語適性は、未知語意味理解ストラテジー能力と関連があるのか。
  • (2)言語適性は、未知語意味理解ストラテジー能力を予測するか。
  • (3)未知語意味理解能力の観点から学習者は、どのような適性プロフィールの観点に分類できるか。

期待される研究成果

本研究の成果により、学習者の適性にあった語彙指導方法の開発を行うことができる。これは、日本語教育における語彙指導時間の短縮をもたらす。また、従来、言語ストラテジーは、個人差の外的要因として単体で論じられることが多かったが、言語適性という内的要因という観点で論じることから、個人差という概念を複合的にとらえ、第二言語習得の本質に迫ることができる。

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