Shitennoji University

令和元年度 科学研究費助成事業(科研費)令和元年度 採択課題 研究概要①

災害に対する看護の備え尺度の検証と実用化の試行

研究代表者氏名 山本 あい子
(ヤマモト アイコ)
所属 看護学部
看護学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(B) 研究課題番号 15H05069

研究の目的

本研究目的は、臨床的に使用可能な「災害に対する看護の備え尺度」の検証と実用化の試行である。130 項目から成る「災害に対する看護の備え枠組み尺度案」(科研番号23390495)に基づき、その項目を精錬後、日本国内において災害看護の実践者、教育・研究者等を対象として質問紙調査により信頼性及び妥当性を検証する。次に、価値観や文化等が異なる国外を対象として、国内調査と同様の手順で尺度の検証を行う。その後、検証された尺度を用いて、Web を介した質問紙調査を行い、災害に対する看護の備え度を測定し得る実用的な尺度の試行を目指す。

期待される研究成果

多発する災害に向けて備えることの重要性が強調されているが、同時に、何をどのように備えるのかと言った知識・情報の不足、災害発生の不確定さ、ならびに発生に対する恐怖等から、備えに向けた行動化が伴いにくいのが現実である。本構想を通して、看護における災害に対する備え尺度が構築されること(日本国内外版)、また本備え尺度への回答を通して、具体的な備え項目を判別しうる尺度が開発されることである。

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近代大阪の在野儒学者の研究―その経学と社会政治活動―

研究代表者氏名 矢羽野 隆男
(ヤハノ タカオ)
所属 人文社会学部
日本学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 15K02093

研究の目的

従来〈儒学における西洋学の受容〉の研究対象となるのは、儒学を素養として西洋学を修めた「洋学者」が中心で、また明治期の儒学者を取り上げる研究も、多くは帝国大学など近代教育の中で活動した学者であった。在野の儒学者は対象外に置かれ、彼らが儒学を基礎に西洋学をいかに受容し、どのように活動したかは十分な研究がなされてこなかった。

本研究は、近代大阪を代表する在野の儒学者で、中央にも積極的に働きかけた泊園書院の藤澤南岳、梅清処塾の山本梅崖らを対象に、日本漢学と日中交流史の研究者の共同研究によって、その経学(儒教の経典解釈学)における西洋学の受容、および清末知識人との交流、時事的発言など、経学および社会政治上の活動を多角的に解明してその思想史的意義を考察するものである。

共同研究の分担は下記のとおりである。
A 経学および西洋学受容に関する思想史的考察:矢羽野隆男(研究代表者)
B 社会政治上の活動およびその思想史的考察:呂順長(研究分担者)

期待される研究成果

  • 1.これまで研究対象外であった近代大阪の在野の儒学者を対象とすることで、近代思想史の空白を埋める点に意義がある。彼らは洋学者や官学の学者でないために見落とされた存在であったが、本研究により彼らを近代思想史上に正当に位置づけることができる。
  • 2.近代の儒学者の経学を正面から取り上げる点に新たな研究領域を拓く特色がある。近代思想史における経学研究は極めて手薄で、南岳・梅崖の著作も手付かずである。本研究により、大阪の儒学の経学研究から発展して〈近代儒学における経学〉の領域へ広がる可能性をもつ。
  • 3.国際的な人的交流を示す最新資料の活用により、大阪の儒学者の活動を東アジアを視野に入れた近代思想史において捉える点に先進的かつ普遍的な特色がある。梅崖ら大阪の儒学者と清末知識人・中国人日本留学生との交流記録、政府要路への意見書など最新資料の発掘分析により、近代の日本・中国の動きと連動する活動の思想史的意義の探究が可能となる。

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モビリティとシティズンシップ―ウガンダ・アルバート湖岸地域の共生原理―

研究代表者氏名 田原 範子
(タハラ ノリコ)
所属 人文社会学部
社会学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 16K04126

研究の目的

グローバル化のもとで生じる国境を越えて展開される社会現象と社会問題を、社会学的アプローチにより解明する。主としてアフリカ大湖地域の漁村社会のフィールドワークを実施し、他地域の移民社会との比較研究も行う。

期待される研究成果

トランスナショナルな移民の動態、国境を越えて「つながる」ネットワークの活用を明らかにして、モビリティの基底にある社会的政治的なメカニズムが明らかになる。そして、人間が何らかの共同体や社会に「帰属する」ことの意味をあらためて問い直すことを通して、「共生」のためのシティズンシップを展望する。

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コモンズという場所の性格に根差した地域管理政策

研究代表者氏名 五十川 飛暁
(イソガワ タカアキ)
所属 人文社会学部
社会学科
職位 講師
研究種目 基盤(C) 研究課題番号 16K04127

研究の目的

近年、地域社会のコモンズ空間は、従来のオーバーユースだけでないアンダーユースの問題も加わり、その管理の見直し論が盛んである。そして、その特徴であった控除性と排除性を避けつつ、どう多様なガバナンスを形成していくかが課題となっている。ただ、そうやって多様性が模索されるガバナンス空間は、他方でその意味内容としてはたいへん画一化に向かっているように思われる。とするなら、それとは異なる管理論を考えておくことにも価値があるに違いない。本研究では、コモンズ空間が歴史的に備えてきた重層性や可変性という特徴にあらためて注目し、その特徴を前提につきあってきた人びとのつきあい方から、地域社会の空間管理にあらたな選択肢を提示することを目的としている。

期待される研究成果

本研究の目的を達成するため、いくつかの事例地を選定しながら、フィールドワークを実施していく。地域コミュニティ内には、従来コモンズをめぐる議論が注目してきた共有地やその共有をめぐる仕組みだけでなく、私有地や公有地といったさまざまな色合いをもつ空間が存在する。今回の研究では、コモンズ空間としてとくに共有地に限定することなく、コモンズ性があらわれる場所という観点から選定をおこなっていく。また、実際の調査の際には、空間そのものというよりも、その空間とかかわってきた地域社会のほうにポイントをおき、現場の地域生活を把握すること、および、そこからの検討を重視していく。そこで得られるであろう、人びとの生活の論理からは、学問的にはコモンズをめぐる議論を批判的に発展させることができるだろうし、政策論的にも、地域空間の管理のあり方について模索している各地の人びとが、自分たちの今後を考える際の判断材料を提供できるのではないかと想定している。

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保育者の教育相談能力を高める研修プログラムの開発

研究代表者氏名 八木 成和
(ヤギ シゲカズ)
所属 教育学部
教育学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 17K04652

研究の目的

保育者は保護者との連携を深めることが求められ、教育相談の能力向上が必要となる。保育現場における発達障害のある子どもや「気になる」子どもへの対応は喫緊の課題である。また、教員免許更新制の必修領域の内容が見直され、選択必修領域の中に「教育相談」の内容が含まれた。今後、教育相談を行うための発達障害のアセスメント、その結果に基づく支援計画の立案は研修すべき喫緊の研修内容と考えられる。今後も保育者の資質向上は更に求められる。そこで、本研究では、更新講習における教育相談に関する研修内容を事前の課題意識調査、事後評価及び追跡調査から受講者の研修ニーズと研修の成果を明らかにし、その結果を基にして教育相談に関する保育者の研修プログラムを開発することを目的とする。

期待される研究成果

本研究では特別支援教育におけるアセスメントとそのアセスメント結果に基づく支援目標と計画の立案に関する保育者の知識と技能を高め、教育相談の能力を高めるための系統だったプログラムの開発を目指している。本研究は、保育現場の特別支援教育や「気になる」子どもに関する喫緊の課題に対応できる内容であり、「人的環境」としての保育者に対する新たな知見を提供できるものである。また、本研究の成果を公表することで全国的に更新講習の改善に資することができる。

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教育と福祉の「関係性」に関する原理的・実証的研究

研究代表者氏名 浅田 昇平
(アサダ ショウヘイ)
所属 教育学部
教育学科
職位 准教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 17K04653

研究の目的

本研究は、子どもの教育・福祉の権利保障のあり方が社会的に注目される現況の中で、教育と福祉の「関係性」(その共通性と差異性、接点・連携・統合・融合等の内実とその可能性)を、とりわけ「子どもの生活・生存保障」という観点をもとにして教育、福祉の原理、実態(制度・政策、実践現場)の両面から究明することを課題とする。これを通じて教育と福祉の関係原理を求めることによって、「教育福祉論(学)」のさらなる深化を図ることを目的とする。

期待される研究成果

先行研究では、教育、福祉の固有性を横断または包含する視座で両者の「関係性」を実証的に究明することを積極的に意図した研究は少ない。こうした研究状況を踏まえ、「子どもの生活・生存保障」という観点からこれを究明することは「教育福祉」研究の深化を図るものであると捉えられる。ここに本研究の期待される研究成果がある。

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妊娠早期からの主体的・継続的な出産準備教育による父親役割形成への効果

研究代表者氏名 宮本 雅子
(ミヤモト マサコ)
所属 看護学部
看護学科
職位 准教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 17K12327

研究の目的

職業をもちながら出産育児を行う女性が増え,長期にわたる子育て期を夫(パートナー)の協力を必要とする時代を迎えている。夫の育児参加は,出産時の立会いや,産前産後の教育的な関わりを通して徐々に増加し,「イクメン」は社会現象となっている。先行研究では,父親の妊娠期の胎児への関心や育児行動により父親役割の認識や自尊心が高まる一方で,男性の付加的な関わりや産後の不安,うつなどの心理的な変化も問題とされている。本研究では,夫が妊婦と同様に主体的に妊娠・出産・育児に関わることが可能な妊娠初期からの個別的な教育プログラムを開発すること,およびその評価を目的とする。出産や育児を夫婦,家族のニードに応じて父親の参加を容易なものとし,夫婦ともに親役割の認識や子どもへの愛着を高めるケアについて探索する。

期待される研究成果

1.夫の親性と心理・ケアニード
妊娠期の夫は不安な状態であり,知識普及やどのような参加(出産準備や妊婦健診など妻との関わり)が望まれるのか,確信をもって出産育児に関わりたいニードがある。また,父親の伝統的親役割観や仕事の質や量,妊娠出産などの知識不足が要因の一つとして父親役割意識や親性,自己効力感を低下させる可能性がある。
2.教育的介入(出産準備教育)
夫の個別的なニードに応じた教育,および父親のための知識普及により,親性や父親役割意識,分娩期から育児期に経過に応じた参加度,自己効力感が高まり,不安やうつが低下する。

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身体疾患で抑うつ患者への在宅療養移行セルフケア支援プログラム(Transitional  Self-Care Program,以後TSCP)の開発

研究代表者氏名 宇佐美しおり
(ウサミ シオリ)
所属 看護学部
看護学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 17K12461

研究の目的

本研究は,身体疾患で,軽度―中等度の抑うつ患者に対し,入院時から退院後1か月間,研究に同意の得られている2か所の総合病院並びに2か所の訪問看護ステーションにおいて,在宅療養移行支援(Transitional Care,以後TC)を目的としてPAS理論(Psychoanalytic Systems Theory,精神分析的システムズ理論,以後PAS理論)を用いた在宅療養移行セルフケア支援プログラム(Transitional Self-Care Program,以後TSCP)を開発する。身体疾患で軽度―中等度の抑うつ患者への国内外のTC,TCにおけるセルフケア支援,PAS理論とセルフケア支援に関する文献検討を行い,TCを基盤としたTSCPを作成し,プログラムの妥当性の検討,パイロットテストを行い,プログラムを修正する。その後TSCP実施群とTC実施群(対照群)との比較を行い、プログラムを評価する。

期待される研究成果

在院日数が短縮され,退院する患者の6割が中等度の抑うつ状態である,また患者の抑うつが患者のセルフケアを低下させ,在院期間を長くし,地域での生活期間を短くしている11)。また在宅での生活が促進される中で,訪問看護師の抑うつをもつ身体疾患患者への支援方法に関するコンサルテーションニーズは高い。そこで,本研究を行うことで,①身体疾患を有し軽度―中等度の抑うつ患者に対し,入院中および在宅での効果的セルフケア支援プログラム,セルフケア支援方法が明確になり,②患者のセルフケアを改善して抑うつを軽減し,③うつ状態の重度化予防を行い,④在院日数を減らし,在宅での生活期間を延長し,⑤患者の身体機能とQOLを促進することができるだろう。さらに身体疾患で軽度―中等度の抑うつ患者に対するTSCPの開発は皆無であり,⑥国内外において,学際的・学術的意義は非常に高い。

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幼児の学びと保育者の保育を支援するタブレット用アプリとその活用に関する実証的研究

研究代表者氏名 松山 由美子
(マツヤマ ユミコ)
所属 短期大学部
保育科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 17K01166

研究の目的

幼児の育ちに適した情報の教育・保育利用について考え、幼児期の学びにふさわしく、かつ保育者も安心して活用できるメディア教材の開発が重要であると考えており、2014年度から幼稚園等の保育現場における幼児の育ちに寄与するタブレット用アプリケーション「ASCA(Archives Sharing and Creating Album for Kindergarten)」の開発に着手し、保育現場で実証実験を始めた。この研究を継続して積み重ねることで、幼児の育ちや保育者の保育を支援するタブレット端末の活用とアプリケーションのあり方をまとめ、保育現場における望ましいメディア環境のあり方を、特にタブレット端末活用やアプリ開発の視点から提案することが目的である。

期待される研究成果

現在、日本の保育分野では、幼児の評価のあり方について特にポートフォリオ評価への関心が高まっており、そこにデジタルカメラ等のメディア活用が注目されている。本研究では、保育現場と連携して日本の保育に即したタブレット活用ができるアプリの開発を行うことが可能なため、幼児の学びを支援する保育者の意見を取り入れながら、保育者の評価活動への支援も可能にするようなメディアのあり方について提案することも可能である。日本の保育における保育者の多忙さや困難さを解消することにとどまらず、保育をより豊かなものにし、メディアが保育者と幼児の双方にとって有効である保育実践を支援するツールとなることを示すことができると考えている。

また、保育現場に必要なアプリの機能の提示を含めたアプリ設計・開発だけではなく、幼小連携や家庭との連携におけるメディア活用についてそれぞれに考えてきた研究者が共同してこの「ASCA」の開発と実践をもとに研究の結果を分析することで、従来から議論されている幼小連携及び家庭との連携の強化についても、メディアの双方向性を活用することにより進む可能性が見出されており、アプリの設計・開発と実践によってそれらの課題についても有効な知見を示唆できると考えている。

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中学校のアクティブ・ラーニングにおける「対話的実践」の可能性と課題

研究代表者氏名 山田 綾
(ヤマダ アヤ)
所属 教育学部
教育学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 17K04589

研究の目的

本研究では、日本の中学校でアクティブ・ラーニングを導入する際に、主体的で深い学びが成立するために「対話的実践」が果たす役割と条件について明らかにすることを目的とする。そのために、以下に取り組む。

  • 1.フランスのフレネ中等教育の実験的プログラムを取り上げ、主体的で深い学びの具体的展開を「対話的実践」の視点から検討する。教授中心の教育から生徒主体の学習へと転換する際に、生徒の個別化学習と共有化における「対話的実践」の可能性と課題や教師の役割・教育課程・評価のあり方との関係について検討する。
  • 2.日本で戦後生活教育の理念に基づき全教科や総合学習で問題解決的学習過程に取り組む学校(愛知教育大学附属岡崎中学校など)と公立中学校の調査を行い「対話的実践」の可能性と課題を検討する。

期待される研究成果

研究では、ダイナミックにカリキュラム開発とアクティブ・ラーニングに取り組む実験校の実践を「対話的実践」を核に分析し、アクティブ・ラーニングを具体的に実現していく視点を明らかにする。取り上げるのは、研究代表者・山田が昨年3月まで校長を務めた戦後生活教育の理念に基づき問題解決的学習過程で授業を展開してきた愛知教育大学附属岡崎中学校や同様の理念を掲げてきた中学校の実践と、実験的にフレネ教育をおこなうクラスを設置したフランスの中等教育プログラムである。

それゆえ、第1に、アクティブ・ラーニングがどのように対話的実践を成立させ、主体的で深い学びを実現できるのかについて検討できる。両実践を比較し、フレネ教育と生活教育の共通点と独自性から、「対話的実践」の役割や意義、課題と条件を明らかにすることができる。そこからアクティブ・ラーニングの可能性と課題を明らかにできる。

第2に、「対話的実践」を成立させるには、教科担任制である中等教育ではカリキュラム・マネジメントが重要になるが、対話的実践の成立とカリキュラム・マネジメントの関係を明らかにすることができる。 これらにより、2017年3月告示の学習指導要領おいて求められている「主体的で対話的で深い学び」とは何か、そしてどのような課題があり、どのような条件が必要になるのかを実践的かつ原理的に明らかにすることが期待できる。

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聴覚障害ソーシャルワーカーの養成プログラムに関する研究

研究代表者氏名 原 順子
(ハラ ジュンコ)
所属 人文社会学部
人間福祉学科
健康福祉専攻
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 17K04282

研究の目的

聴覚障害ソーシャルワークの専門性を担保したソーシャルワーカーを養成するためのプログラムを開発・検証することを目的として、研究をおこなう。
 研究代表者はこれまでに、聴覚障害者の特性やさまざまな実態の理解に必要な「ろう者学」の修得の重要性や、聴覚障害ソーシャルワーカーに必要なコンピテンスを抽出し、聴覚障害ソーシャルワークの専門性を構築している。しかし、これらの専門性を修得するプログラム研究は未だなく、社会福祉士、精神保健福祉士といった国家資格のカリキュラムにも含まれていない。そこで海外における聴覚障害ソーシャルワーカーの養成に関する情報収集ならびに第一線で活躍している国内外の聴覚障害ソーシャルワーカーへの調査から、専門性を担保した聴覚障害ソーシャルワーカーの養成プログラムを開発し、またその検証をおこなう。

期待される研究成果

聴覚障害者を対象とする聴覚障害ソーシャルワーカーの養成プログラムが開発されれば、生活上の問題を抱える聴覚障害者への相談支援の質が担保されることになる。特に文化モデルアプローチ、Anti-Oppressive Social Work、Cross-Cultural Social Work、Critical Social Work 理論を修得した聴覚障害ソーシャルワーカーを養成すれば、ストレングス視点での介入ができ、聴覚障害者をエンパワメントすることができると考える。これらの理論がソーシャルワーカーにとって重要であることを検証することで、社会福祉士、精神保健福祉士の養成教育にも汎用することができる。

<具体的な研究成果>
①聴覚障害ソーシャルワーカーの養成プログラムを開発する。
②ソーシャルワーク理論や文化モデルアプローチが、養成プログラムにどのように反映されているのかを明確にする。
③社会福祉士、精神保健福祉士のカリキュラムに加え、聴覚障害ソーシャルワーカーが修得すべきカリキュラム内容を明確にする。

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イギリス現職教育にみる文学の省察的読みの力を育む対話型小中連繋学習指導プログラム

研究代表者氏名 松山 雅子
(マツヤマ マサコ)
所属 人文社会学部
日本学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 18K02620

研究の目的

国語科はことばで考える方法を学ぶ教科である。表現されたものの考え方や思いを対象とする。それ故、プロの過不足ない文体で表現された文学のことばは貴重な学びの根源だが、対話型・協働型の方法論が真に意味を持つのは、対象テクストの質を分析しえた教師の力量があってこそである。

わが国の文学教育の課題の一つが、この教材分析と方法論のかかわりの希薄さにあるとすれば、学習指導要領等に方法論的示唆を得た源泉の一つイギリス国語科教育で、教師が長年にわたり留意してきた両者の必然性に根差した文学の学習指導プログラムを分析・考察することが、実践理論的・方法論的基盤づくりの一助となると考える。

具体的には、初等から中等への連続期(小学校高学年から中学校1年)に焦点を当て、内ロンドンに位置する小・中国語科教科教育センター(Centre for Literacy in Primary Education:CLPE / English & Media Centre:EMC、ともに旧内ロンドン教育局時代から存続し、全国的、国際的影響力をもってきた現職教育研究所)の文学を軸にしたリテラシー教授プロジェクトの内実を事例として検証を試み、教師教育の観点から、先の問いに迫るものとする。

期待される研究成果

初年度2018年度には、当該諸機関との情報交流、わが国の改訂学習指導要領が重視する、ことばによる「見かた・考え方」の学びと文学との関係性の検討、多言語文化社会イギリスの国語教育基盤理論として多大な影響を与えてきG.Kress(2010)Multimodality:A social semiotic approach to contemporary communication. (Routledge)を、『マルチモダリティ-今日のコミュニケーションにせまる社会記号論の試み』(溪水社、2018.12.10)として監訳、刊行した。

以上の研究基盤に基づき、続く2年間では、
①義務教育修了資格試験GCSE「文学」評価対象となる2主流―幻想譚系文学(CLPE開発の読書力向上プロジェクト6年生ファンタジー教材(『肩甲骨は翼のなごり』)からGCSE 定番作品『嵐が丘』へ)とリアリズム系文学(リアリズム児童文学(『おやすみなさい、トムさん』)からGCSE定番作品『高慢と偏見』へ)と連動する学習指導とその教師教育プログラムから、文学教育の発展的展開とその教師教育の内実を、文献調査、当該センター主任とのインタビュー、現職研修参加等から探求を試みる。特に、対話型・参加型学習指導方法と評価の必然性と有効性の考究を通して、現職教育の体系性を明らかにする。
②以上から得た知見をもとに、大阪府下の小中教諭5名の協力のもと、小中連携を視座に入れた文学の授業試案を提案し、パイロット実践を試み、国語科小中一貫カリキュラムに関する新たな問いを見出す示唆を得る。

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在宅で認知症者を介護する高齢者の睡眠の実態と睡眠質向上のための教育ケアプログラム

研究代表者氏名 坂口 京子
(サカグチ キョウコ)
所属 看護学部
看護学科
職位 准教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 18K10525

研究の目的

現在、わが国の高齢化率は28.1%(2018年9月)となり、超高齢社会に伴って認知症者も増加している。認知症者の社会施策としては、予防・維持改善が基本におかれ、治療の場は、病院や施設から在宅での療養生活へと移行しつつある。認知症は慢性的に進行し、生活療法が重要であるため、在宅における家族の見守りや介護が重要な位置を占めている。しかしながら日本の世帯状況は、核家族化、高齢者夫婦世帯が多く、老々介護状況にある。高齢者でありながら、在宅で配偶者の認知症者を支える家族は重要な役割を担うことになるが、高齢介護者の睡眠問題については、あまり議論がされておらず、先行研究も僅かである。そこで、本研究は、認知症者を在宅で介護を行っている高齢介護者の睡眠に焦点を当て、睡眠の実態の把握と、睡眠改善に向けた教育プログラムを構築・実施し、高齢介護者の負担を減らす目的である。本研究者の先行研究では、高齢介護者の約8割に睡眠障害が生じていることが明らかにされ、睡眠障害の誘因が認知症者の介護そのものによるものではなく複雑に要因が絡み合っていることも判明した。本研究はさらに、研究の幅を広げ、睡眠実態と要因の解明、教育ケアプログラムの有用性について明らかにする。 第1段階研究:認知症を介護する高齢介護者の睡眠に関する調査研究を実施。第2段階研究:高齢介護者の睡眠の質改善に向けた睡眠教室(ケアプログラム)の構築と実施及び有用性について。以上が研究目的である。

期待される研究成果

本研究の学術的・社会的な成果として、認知症者の睡眠の研究は多く発表されているが、高齢社会でありながら、高齢介護者の睡眠の実態は明らかにされていない。一般には高齢者は、加齢による睡眠構造の変化から約3割が睡眠障害を持っていると言われている。睡眠障害は転倒の危険、慢性疾患の悪化、精神疾患の危険、死亡率の増加など、高齢者にとっては睡眠の質を高めることが重要な課題の一つと言える。高齢者でありながら、生活困難である認知症者を介護する場合、さらに睡眠障害のリスクは高い。①認知症を介護する高齢者の睡眠についてさらに研究が進むと、睡眠医学の発展に関与する。②睡眠障害の実態の把握は、家族看護の問題点や重要性を再認識することができる。③また睡眠改善に向けた教育プログラムの構築・実施は、高齢介護者の声に耳を傾けることなり、高齢介護者の理解に繋がる。④教育プログラムの実施・評価・発展により、高齢介護者の睡眠の質を高めることとなり、健康維持、精神的安静をもたらし、高齢介護者のQOLや介護力の維持向上に繋がる。認知症者は介護者からの受ける影響は大きいため、介護者の睡眠改善は、しいては認知症者自身のQOL改善が図れるものと思われる。

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月経前不快症状を緩和する健康習慣形成プログラムの構築

研究代表者氏名 松本 珠希
(マツモト タマキ)
所属 教育学部
教育学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 18K11086

研究の目的

月経前症候群(PMS)は、月経前の黄体期に繰り返し出現する心身不快症状の集積である。PMSは女性なら誰もが経験する症状であり、生命に直接関わるような重大なものではないため、軽視されてきた感もある。しかし、PMSが思春期から始まり、女性の健康と社会生活に少なからぬ影響を及ぼすことも考慮すると、女性自身が心身の変化について認識するとともに症状をうまくコントロールし、Quality of Lifeの維持・向上が図れるようなセルフケア行動をとることが必要と考えられる。本研究では、軽症から重症までPMS症状レベルが異なる有経女性を対象に、PMSを知る第一歩となるセルフモニタリングにより、「月経周期に伴う心と体のリズム」を知り、継続可能な健康生活習慣を実践することにより、PMS症状が緩和するのか否かについて検討する。PMSセルフモニタリングとして、紙媒体による症状記録用紙の使用に加え、PMSスマートフォンアプリの開発と導入を試みる。また、セルフモニタリングを含め、健康生活習慣形成に向けての小さな変化を続けるというセルフケア行動がPMS症状の緩和に繋がる場合、その背景には、生命神経系ともよばれ、心と体をつなぐルートである自律神経系が関与するのかについても探究する。

期待される研究成果

PMSは、生物学的な要因だけでなく、その女性の性格傾向や身体症状に発展しやすい心理反応、偏った食生活や運動不足、喫煙などの不適切な生活習慣、家庭環境や職場におけるストレスなど、女性を取りまく社会環境の変化も症状の発現と憎悪に影響する。その意味で、PMSは「現代女性の新たな生活習慣病」といえるのかもしれない。PMSを発症する性成熟期女性の大半が利用しているスマートフォンの導入を試みる本研究は、手軽に日々のバイオリズムの変化を認識し、目に見えない心身のストレスを自律神経活動動態で視覚化できることから、PMSに対する理解を深め、セルフケアへの関心と実践力を高めることができる可能性を有している。加えて、今まさに、日本が目指す「女性の活躍」に相応しい新たなヘルスプロモーション研究を担う役目を果たすことができると確信している。

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小児救急医療機関における子育て支援プロモートモデルの開発

研究代表者氏名 藤澤 盛樹
(フジサワ セイキ)
所属 看護学部
看護学科
職位 講師
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 18K10411

研究の目的

小児救急医療機関において子育て支援を促進するための方略をモデル化し実践へ適用することを目的としている。

期待される研究成果

社会的な子育て支援のとりくみが小児救急医療機関に拡充することで、子育て支援の必要な親子や子育て支援を要望する親など、誰もが小児救急医療機関受診を契機に子育て支援へつながる機会を提供でき、セーフティネットとしての役割にも期待がもてる。本研究は、子育て支援に関する既存の社会資源と切り離した子育て支援モデルを開発するのではなく、既存資源の応用を探求しながら、親が利用しやすくニーズに応えられること、小児救急医療機関として効率的で実行可能であることの双方を重視した子育て支援プロモートモデルの開発を目指している。

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http://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-18K10411
※国立情報学研究所の科研費データベースへリンクします。

性の多様性を包摂する小学校国語科教育カリキュラムの開発

研究代表者氏名 永田 麻詠
(ナガタ マヨ)
所属 教育学部
教育学科
職位 准教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 19K02849

研究の目的

本研究の目的は、性の多様性をめぐる課題にことばの問題があることを確認し、小学校における性の多様性の包摂を国語科教育として取り組むこと、性の多様性の包摂をめざすことが、性的マイノリティ支援ならびにすべての学習者への言語力育成につながることから、新たな小学校国語科教育カリキュラムをインクルーシブ教育の一環として開発することである。

期待される研究成果

  • 性の多様性を包摂する小学校国語科教育で育成できる言語力を定義し、目標や方法を系統化したカリキュラムの開発が期待できる。
  • 性の多様性を包摂する小学校国語科教育カリキュラムが、性的マイノリティにとってどのような具体的支援として機能するかを実証することができる。
  • 性の多様性を包摂する小学校国語科教育を、インクルーシブ教育の一環として位置づけることができる。
  • 開発したカリキュラムの一部を試行し、フィードバックすることで実践可能な小学校国語科教育カリキュラムの構築が期待できる。
  • 開発した小学校国語科教育カリキュラムを教員用研修マニュアルとして作成し、広く活用可能な形にする。

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http://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19K02849
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